ボーイングの “幻の新型哨戒機”なぜサッパリ売れず? 「魔改造でP-8の魂投入のモリモリ性能」も「あれ、全く…」

インフラ整備 予防保全型へ転換

アメリカの航空・防衛大手ボーイングは、他社製ビジネスジェット機をプラットフォームにした海上監視機の開発を試みましたが、成功しませんでした。コンセプトは正しかったはずなのに、なぜ計画はとん挫してしまったのでしょうか。

ビジネスジェット機はないからカナダ製

 アメリカの航空・防衛大手メーカー、ボーイングは自社の旅客機を軍用機へコンバートさせるのを得意とし、近年は737旅客機からP-8哨戒機を、767旅客機からKC-46A空中給油・輸送機を生み出しています。これと同じように、他社製のビジネスジェット機をプラットフォームに海上監視機を開発し販売しようとしましたが、成功しませんでした。なぜでしょうか。

 ボーイングMSAと呼ばれたこの機体は、その名の通り海上監視航空機(Maritime Surveillance Aircraft)を指し、カナダのボンバルディア製のビジネスジェット機「チャレンジャー604」をベース機に試作され、量産型では改良型の「チャレンジャー605」を使う予定でした。2013年11月にボーイングが行った発表によると、用途は「海賊対策や沿岸・国境警備、長距離での捜索救難」と説明していました。

 このベース機となった「チャレンジャー605」は、チャレンジャー600シリーズの当時の最新派生型で全長約20m、最大離陸重量約22tと、ビジネスジェット機のなかでは大型に近い機体サイズです。エンジンを2基で、約7400kmの航続距離を持つため、海上を長時間飛ぶには都合が良い機体でした。

 ちなみに、ボーイング製哨戒機でアメリカ海軍でも使用されているP-8の全長は約39m、最大離陸重量は83t、航続距離は約8300km。MSAは二回りくらいP-8より小型になります。

 ボーイングはMSAに、P-8のミッションシステムをベースにした監視機器を搭載しようとしました。載せるのはAESA(アクティブ電子走査アレイ)マルチモードレーダーや光学・赤外線センサー、電子支援対策(ESM)などです。機体の改造は提携したカナダのフィールド・アビエーション社が行うことになり、試作機は2014年3月に初飛行しました。

機体の大きさが中途半端だった?

 しかし、海外の航空ショーで展示・アピールこそされたものの、来場者の目に止まることはほとんどなく受注に成功することはありませんでした。今も考えられている理由は、ベース機がボーイング製ではなかったためでなく、機体の大きさが中途半端だったためではないか、といわれています。

 ボーイングはP-8の運用費が負担になる中小国を市場に目論んでいたとされていますが、海上の監視飛行はより低速で小型のターボプロップ旅客機からの派生型が向いているということでした。P-8のシステムを流用し搭載すれば、性能はそれなりに約束されますが、市場は受け入れず、ミッションの目的に合わせた機体規模の「選択」を誤ったということです。なお、ボーイングは、日本の海上保安庁にも提案を試みましたが成功しませんでした。

 加えて、2010年代はボーイングにとって受難続きでした。2010年代前半は787旅客機のリチウムイオン電池の発火トラブルと対策による追加出費が経営を圧迫し、開発機種の統廃合も行われました。MSAも2017年6月には計画は終了したということです。

 今後、MSAのような、ビジネスジェット機をベースにした海上監視機は登場するのでしょうか。アメリカとカナダの関係はトランプ政権により冷え込んでいるといわれますので、カナダ製の機体をアメリカのメーカーがベース機にするような例は考えにくいかもしれません。それよりも、海上監視のように長時間飛ぶミッションは無人機へ移っているといえるでしょう。