ヒグマの森で「崩壊間近の“幻の鉄道橋”」とついに対面 “1日15本限定のカギ”で近づく「タウシュベツ川橋梁」の行き方

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北海道・上士幌町にある「タウシュベツ川橋梁跡」は、冬から春にかけて姿を現す鉄道遺構として知られています。ダム湖の水位が上がりはじめる6月下旬、1日15本限定という貴重なカギを予約し、現地を訪ねました。

1日15組限定のカギを手に“幻の橋”へ

 北海道・上士幌町にある「タウシュベツ川橋梁跡」は、“冬から春にかけて姿を現す鉄道遺構”として知られています。音更川に建設された「糠平ダム」によりダム湖に沈んだ旧国鉄「士幌線」の旧線にあたる30連ものコンクリートアーチ橋の遺構です。

 かつては糠平ダムの左岸を走る林道が開放され、だれでもクルマで橋梁跡近くまでいくことができました。しかし知名度が高まるにつれ、幅員が狭く未舗装という悪条件から事故が多発したため、現在は林道入口のゲートが施錠され、クルマでの進入は許可車に限られています。

 現在、ガイドツアーに参加しない観光客がクルマで立ち入るには、「道の駅かみしほろ」で貸し出される「1日15本限定」のカギが必要です。

 ダム湖の水位が上がりはじめる6月下旬、この貴重なカギの予約を確保し、タウシュベツ川橋梁跡を訪ねることができました。取材協力者のクルマでの現地までのアクセス、そして現地の見学のポイントなどを、以下にご案内しましょう。

 カギを借り出した道の駅かみしほろから林道ゲートまでは、国道273号を使い約35kmの道のりです。ゲート近隣には目標物となる店舗などがないため、Googleマップで「幌加発電所」を目的地に指定するといいでしょう。

 糠平ダムのダム湖を右に見ながら国道273号を北上し、Googleマップの案内にしたがって右折すると、100mほどで林道ゲートが現れます。ここでいったんクルマを降り、カギを使ってゲートを開きクルマをゲート内に入れ、再び施錠します。林道沿いには目立つように「ヒグマ出没中」の看板が並び、ゲートそのものにも多数の注意書きが掲げられています。

 ゲートの先の林道は砂利敷きですが、ところどころ、わだち掘れしているところもあり、速度超過は禁物です。林道は山肌の斜面に沿うようにカーブを描きますが、2kmほど進んだところで左右が森に包まれ、林道としては不自然に感じるほどの直線となります。

 その理由は、ここからの林道が、旧士幌線の路盤を転用したものだからです。

橋の全容を掴むには「川を徒歩で渡れ」

 その直線部分が終わり、林道が左に曲がるところにある開けた空き地が、クルマでの最終到達地点となります。ここからは徒歩で、同じく旧士幌線の路盤上の遊歩道を歩いてタウシュベツ川橋梁跡に向かいます。

 左右の森は昼間でも暗く、足元には倒木が散乱し、またところどころにぬかるみがあるので、注意が必要です。そして250mほど歩くと森が途切れ、視界が開けます。ただここではタウシュベツ川橋梁跡のアーチは目に入りません。なぜなら、遊歩道の先に続く石組みが、タウシュベツ川橋梁跡の路盤そのものだからです。

 遊歩道の左手からは、音更川の支流であるタウシュベツ川がダム湖に向かって流れ込みます。そのタウシュベツ川に向かって斜面を降りていくと、タウシュベツ川橋梁跡の美しいアーチが視界に入ってきます。

 川幅は約100mですが、訪問した6月下旬は水量も少なく、川筋は5~6本に細く分かれ、河床をせせらぎとなって流れます。上流方向には北海道の大自然が広がり、エゾシカの群れが気ままに草をついばんでいます。

 橋の全容を対岸から目にとらえるには、この河床を渡る必要があります。頼りになるのは渡りやすい場所を示すピンクのテープでのマーキングですが、それでも水深が15cmほどのところもあり、長靴は必須です。また川底の石は不安定なので、一歩一歩、足場を確かめながら進む必要があります。

 こうしてタウシュベツ川を渡り、対岸の土手を上がると、遠く大雪山系の山々を借景としたタウシュベツ川橋梁跡を、思う存分味わうことができます。

 これからの短い夏にかけ、ダム湖の水位は上がり、タウシュベツ川もそのダムの水位上昇に合わせ水深を深くするはずです。対岸までそれほどの苦労なく渡れ、かつさまざまな角度から橋梁跡を眺めることができるこの時期が、やはり見学にはベストシーズンなのでしょう。

足を運んで間近で見る価値はある! でもハードルは低くはない

 このタウシュベツ川橋梁は1937(昭和12)年に竣工し、1955(昭和30)年のルート変更で廃止に。帯広から北の十勝三股まで78.3kmを結んだ士幌線そのものも、糠平駅から北の区間が1978年に運行がバス代行輸送に切り替えられ、最終的に全線がJR化直前の1987(昭和62)年3月に廃止となりました。

 ダム湖に沈んだタウシュベツ川橋梁は、毎年水に没し、そして結氷、解氷を繰り返すという厳しい自然条件により、近年になり部分的な崩落が目立つようになっています。現状では保たれているアーチ構造そのものも、どこかひとつが欠落すれば、力の均衡が破れ、一気に崩壊するかもしれません。

 ただ、こうした「いにしえの鉄道遺構が徐々に自然に還っていく“はかなさ”」が、タウシュベツ川橋梁跡をいっそう魅力的に、訪ねる人たちの心に映るのではないでしょうか。

 タウシュベツ川橋梁跡の訪問は、「競争率が高いカギの予約」に加え、「とかち帯広空港」からクルマで片道1時間40分かかるため、ほぼ1日がかりの行程となります。そのため、ハードルはけっして低くはありません。

 それでも変化を続け、二度と同じ姿で見ることはできないタウシュベツ川橋梁跡は、なにをおいても一度は足を運ぶべき場所である、そう強く感じました。