「もう乗れない…!」 沖縄のモノレールが“ドル箱”化? 8年で乗客倍増、山手線並みのラッシュでうれしい悲鳴

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沖縄県那覇市を走るモノレール「ゆいレール」が、観光客の急増で深刻な混雑に見舞われています。あまりの混雑に重量オーバーで緊急停止する事態も発生。混雑緩和の切り札として3両編成の増強が進められています。

乗客数は8年前の約2倍に急増

 沖縄県那覇市の都心と、那覇空港や首里城などを結ぶ跨座(こざ)式モノレール「ゆいレール」(延長17km、19駅)が、想定外の混雑に見舞われています。

 最大の理由は、沖縄を訪れる国内外の旅行者数の急増で、そのうちのかなりの人が、空港と都心との往来に、このモノレールを利用しているからです。

 2025年度に同県を訪れた国内外観光客数は約1094万人で、対前年比約9.9%増と好調です。これまで最高だった2018(平成30)年度の約1000万人と比べても、1割弱の増加です(沖縄県観光政策課調べ)。

 これに比例して、ゆいレールの乗客数もほぼ右肩上がりに増えています。年ごとの1日平均乗客数を見ると、累計乗客数が1億人を突破した2017(平成29)年度は約3.7万人、国内外観光客数は約553万人で、現在のほぼ半分の規模でした。

 コロナ禍で大幅ダウンした2020年度から数年間の例外を除き、乗客数を着々と伸ばし、2025年度には同6.6万人に達します。これも、8年前の2017年度の、ほぼ2倍に相当します。

 経営母体の沖縄都市モノレールのバランスシートも概して順調です。コロナ禍直前の2019年度(1日平均乗客数約5.6万人)の営業収益(売上高)は約42億円、当期純利益は約2.2億円ですが、2025年度は同約55.3億円(前年度比約14.2%増)、同約8.6億円を叩き出しています。ただし、当期純利益には、コロナ禍時の経営難で債務超過となった同社を救うため、国などが支援金を注入した分も含まれます。いずれにせよ、ゆいレールの「人気ぶり」は、数字からも証明されています。

 同社の規模を、首都圏周辺の著名なローカル鉄道の営業収益と比べると、秩父鉄道(埼玉県)約56億円(2026年3月期)、小湊鉄道(千葉県)約52.5億円(2025年3月期)、伊豆急行(静岡県)約39億円(同)となります。実は営業収益だけで見ると、秩父鉄道と互角で、小湊鉄道や伊豆急行よりも上、という意外な事実が浮かび上ります。

重量オーバーで緊急停止するという開業以来初の「珍事」も

 ゆいレールは、特に1人で大きなキャリーケース“2本差し”(2個持ち)の観光客に人気のようです。

 タクシーよりずっと安く、那覇名物の早朝・夕刻の交通渋滞でイラつくこともありません。バスと比べても定時性に優れ、乗り降りも楽で運行本数も多く(平日朝7時台は14本、日中は7~9本)、しかも速い(那覇空港~県庁前間の所要時間は13分)のがウケています。

 電車内の混雑は、空港を行き来する旅行者と、通勤・通学で利用する地元住民との利用時間帯がちょうど重なる早朝と夕刻が最も激しく、2023年の混雑率は122%に達します。

 この数字は、全座席と全吊り革が埋まり、さらにドア付近にも人が立つ状態で、スマホ操作に支障はないものの、少し窮屈に思う混み具合に相当します。

 中でも都心部の美栄橋、牧志、安里各駅の混雑ぶりは大変で、ホームで整列する乗客が電車に乗り切れず、次の電車を待つことも珍しくないようです。

 ゆいレールは延長17kmの路線に19か所の駅を持ちますが、2025年度の1日当たり乗降客数トップ5は、1位:那覇空港駅9066人(年間約331万人)、2位:県庁前7606人(同278万人)、3位:おもろまち6139人(同224万人)、4位:旭橋5374人(同196万人)、5位:美栄橋4056人(同約148万人)となります。

 県庁前、旭橋、美栄橋各駅は、都心の目抜き通り、「国際通り」と並行して位置する「都心駅」です。また、おもろまち駅は、都心北東部に隣接する、いわゆる「新都心」の玄関で、大型免税店やショッピングモール、美術館などがあります。

 ゆいレールの混雑といえば実際、2026年4月17日の早朝に都心部の駅で電車が重量制限を超えたため、けたたましい警告音を発しながら緊急停止する事態も起きています。もちろん、開業以来の“珍事”です。

「3両編成」が混雑緩和の“切り札”

 想定外の千客万来に嬉しい悲鳴の同社ですが、「南国のリゾート地で、東京の山手線並みのラッシュを味わうとは」と、首都圏からの観光客から「ぼやき」さえ聞こえてきそうです。

 さすがに「山手線並み」は大袈裟ですが、この事態に同社もただ手をこまねいているわけではありません。現在、混雑緩和の「切り札」として3両編成の増発に注力しているのです。

 混雑のもう一つの主要因は、「貧弱な輸送力」です。ゆいレールは「2両編成/定員165人」でスタートしましたが、乗客数の急増に対応するため、2023年度から「3両編成/定員251人」の編成を投入しました。ちなみに全駅にはホームドアが設置されていますが、増結を見越して当初から3両編成に対応しています。

 現在は2両編成と3両編成合わせて全35本(編成)を保有し、うち5本が3両編成ですが、近い将来これを9本まで増強する模様です。

 一方大型のキャリーケースを引きずる乗客の割合が高い鉄道として、おそらく国内屈指ですが、狭い電車内ではとかく邪魔者扱いされがちです。このため、3両編成は全車両に、大型荷物置き用スペースを完備しており、混雑率の低減にひと役買っています。

 ゆいレールは、ここしばらくは混雑緩和に四苦八苦の日々が続きそうです。

 地元の那覇市単体の人口は約31万人(2026年5月現在)ですが、周辺の市街地域を含めた那覇都市圏の人口は80~90万人で、政令指定都市の堺市(約80万人)に匹敵する大都市と見てもおかしくありません。

 那覇都市圏の交通利便性の向上や、慢性的な交通渋滞を解消するため、ゆいレールのさらなる延伸の要望もいくつかあるようです。一方で、那覇~名護間の鉄道計画や、那覇市内のLRT計画なども噂されており、当分目が離せません。