「逆走も落下物も地滑りもわかります」 高速道路会社の夢「リアルタイム全線監視システム」が画期的すぎた! カメラも電源も不要 カギは“昔からあるケーブル”

造船大国・日本再生に必要なこと

NEXCO東日本が道路の維持管理の在り方を変える可能性を秘めた新技術を公開。リアルタイムかつ面的に、道路やその周辺で起きる変化を捉えられるものだといいます。カギになるのは、昔から高速道路に存在する設備でした。

カギは光ファイバー「え、そんな使い方!?」

 NEXCO東日本は2026年5月26日、「高速道路の既設光ファイバ通信網を活用したモニタリング実証実験」の報道公開を、長野県の上信越道リニューアル工事現場で行いました。高速道路の維持管理のあり方をガラリと変えてしまう可能性を秘めた取り組みです。

 というのも、従来、カメラ映像や通報、点検でしか把握できなかった道路の変状、路面状態の急変、果ては交通量観測や渋滞の発生といったといった突発的な事象まで、リアルタイムかつ道路の全域にわたってモニタリングすることが可能になるというのです。

 そのカギになるのが、「どこの高速道路にも敷設されている」という、通信用の光ファイバーだといいます。トラフィックカウンター(交通量計)のデータをバックオフィスに送ったり、交通管制から道路情報版に情報を流したりする目的で昔から設置されているものだそうです。

 現場の詰め所には、この取り組みを模式的に説明するため、ミニカーを置いた橋の模型と波形のグラフを映すモニターが設置されていました。橋の下面には光ファイバーケーブルが引かれています。橋の上のミニカーを動かすと、桁の1スパン(橋脚と橋脚のあいだ)がたわむように、モニターの波形がくぼみを描きました。

 これこそがモニタリングの仕組みです。クルマが光ファイバーの上を通ったひずみや荷重を、光のパルスを送った際の散乱を分析することで波形にしているのだとか。つまり、光ファイバーそのものを計測器にできるというわけです。

「これまでのパトロールカーによる巡回や、トラフィックカウンターなどによるスポット的な交通観測などを、よりきめ細かに面的に、線1本でまかなうことができます」(NEXCO東日本 事業創造課 小暮英雄課長)

「え、落下物なんかもわかるんですか?」と聞くと、鹿島建設の光ファイバ推進室 担当部長の今井道男さんは、「たとえば、多くのクルマが急ハンドルを切っている動きを波形から読み取れるので、『そこに落下物があるんだな』というのが推測できます」と答えました。

 さらに「逆走も、波形が普通と違うのでわかりますよ」とのこと。それだけでなく、舗装がたわんでいたり、ポットホール(穴ぼこ)ができていたりと路面の変状も波形からわかるといいます。ちなみにこの技術は、鹿島建設からの提案を受けてNEXCO東日本が実証に乗り出したものです。

可能性が無限大すぎる!? インフラに留まらない活用法

 今回公開された現場は、法面の地すべり対策としてトンネル(ボックスカルバート)を新設し、その上に盛土をしている場所です。ボックスカルバートの上には横断方向に光ファイバーを設置し、その上から盛土をすることで、法面の変状を計測する仕組みを整えているといいます。ちなみにこの技術、電源がなかったり衛星通信(GNSS)が届かない場所で使えることも大きな強みだといいます。

 これまで道路施設の変状を計測する方法は、法面のアンカー張力計測や橋梁のたわみ計測など、それぞれ専用の測定器を用いていたそうです。これらを全て光ファイバーに置き換え、道路内のケーブルとつないでネットワークを構築し、集約的なモニタリングを可能にするといいます。さらには光ファイバーで温度も計測可能なので、路面凍結の監視も置き換えられそうだということです。

 もちろん、このデータを既存のカメラ映像や車両プローブデータ、天候・事故といった外部データと連携することも視野。自動運転車への道路側の情報提供にも活用できるといいます。鹿島建設によると、すでに自動車メーカーとの協業も動いているとのこと。

 しかし、昔からある光ファイバーならば、もっと以前からこのアイデアがあってもよいようにも思います。今井さんによると、電信会社がすでに自前の通信網検査に活用している手法を道路インフラに応用したものだそう。背景には、センシング技術の進歩によって、光ファイバーのひずみなどの計測を精緻にできるようになったことがあるといいます。

 ただ、現状では光ファイバーのひずみや振動といった”響き”が届く範囲が40kmに留まります。そこでNEXCO東日本ではまず、長野工事事務所が管理する更埴IC―松井田妙義IC間およそ100kmを対象に、切り替え器や増幅器を使って響きを中継するなどして、より遠くまで届けるシステムを構築するといいます。2027年度の実用化を目指しているそうです。

 そしてもう一つのポイントが、波形の分析による予測精度の向上です。ここはまさに、AIの活用のしどころだということでした。