
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内の喫茶店でコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。
神様:訪日外国人観光客数が伸びています。7月16日、日本政府観光局(JNTO)は2025年6月の訪日外客数(推計値)を公表しました。前年同月比で7.6%増となる337万人となり、6月として過去最高を更新しました。
T:すごいですね。一体どこまで伸びていくのでしょうか。
神様:2025年上半期(1月~6月)の累計では2,151万人となり、2024年同期を370万人以上上回り過去最速での2,000万人突破となりました。
T:すでにコロナ禍前の2019年を上回っているのでしたね。
神様:コロナ禍前の2019年の訪日外客数は3,188万人で、1964年以降で最多でした。一方で2024年の訪日外客数が 3,687万人でしたから、2024年の時点で上回っています。
T:今年はそれをさらに上回って4,000万人を超えることが期待されますね。
神様:まだまだ伸びていくことが期待されていますし、政府は2030年までに年間6,000万人の訪日客を目標としています。
T:6,000万人ですか、どうすればこれ以上伸ばすことができるのでしょうか?
神様:その前に、観光庁が発表した2025年4~6月期のインバウンド消費動向調査を見てみましょう。調査によると、旅行消費額(推計値)は前年同期比で18%増となる2兆5,250億円となりました。費目別に構成比率を見ると、買物代が26%と2024年の31%、コロナ禍前の2019年の37%と比べて低下傾向にあります。その一方で、宿泊費は38%と2024年の33%、2019年の29%と比べて上昇し、宿泊費が消費のメインとなっていることが分かります。

T:海外から日本に来れば日帰りは難しいでしょうし、宿泊するのは当然と思いますが、宿泊費が伸びているのは何故でしょう?
神様:1回の旅行における滞在日数が伸びているのは要因としてあるでしょう。また、訪日外国人は宿泊先を選好する傾向があります。都市部ではビジネスホテルよりはシティホテル、富裕層であればラグジュアリーホテルを選ぶ傾向にあります。
T:つまり宿泊費が高くても快適に過ごせる場所を選んでいるということですね。
神様:おっしゃる通りです。一方で、実は国内宿泊施設の客室稼働率という観点で見ると、コロナ禍前である2019年の62.7%には現在も届いていません。2024年の客室稼働率は59.6%でした。2025年も4月、5月と61%を超えてはいますが、62.7%には届いていません。ここに客室稼働率を伸ばす、すなわち訪日外国人の受け入れをまだまだ増やせる余地があるとも考えられます。

T:なるほど。訪日客を増やすポイントは宿泊施設にあり、ということですか。
神様:いまだ訪日客は三大都市圏に集中しており、それ以外の地方都市には韓国や台湾といった一部の訪日客以外はあまり訪れていないのが現状です。そこには、宿泊施設が未整備である地方が多い点も関係があるでしょう。今後、訪日客をさらに伸ばすためには、都市圏から地方へ観光スポットを広げていくことが必要です。そのためには訪日客が好んで宿泊できるようなホテルなどがあることが望ましいですが、需要に対してホテルの新規開業数が追いついていないのが現状です。
T:しかし、地方に立派できれいなホテルがあれば、単純に外国人が行くわけではないですよね。観光に携わる人手不足の解消も重要でしょうし、交通機関も受け入れられる体制があるのかどうか。地方では鉄道をはじめとした交通機関は縮小していますからね。
神様:その通りです。その地方に行くと何があり、何を楽しめるのか?そもそも行きたいと思わせる魅力がなければ行かないでしょう。国、自治体、民間企業が知恵を絞る必要があると思います。それでも、訪日客数が右肩上がりで上昇している現在、宿泊施設の客室稼働率も上昇を続け、やがてキャパシティの限界に近づくかもしれません。ホテル業界全体では平均単価向上の恩恵を享受できるでしょう。
T:2030年までに訪日客6,000万人を達成できるか、そしてどのように地方を盛り上げていくのか、注目したいと思います。
(この項終わり。次回8/6掲載予定)
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