日中経済、進む「選択的依存」=供給網分散も商機逃さず―台湾有事答弁1年

「6月に詰む」日本の石油状況は

 高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁から7日で1年。日中両国では、経済安全保障の観点から相互依存を見直す動きに拍車が掛かっている。中国は半導体製造装置、日本はレアアース(希土類)など重要鉱物の調達先を分散。それでも巨大市場や先端技術に関する結び付きは根強く、リスクを抑えながら商機を追う「選択的依存」が鮮明だ。
 ◇日本の技術と中国の資源
 中国半導体産業の「脱日本化」は道半ば―。中国証券大手の華西証券が10月に公表した報告書が、国産化の実態を映し出す。半導体製造装置の約7割は外国製。輸入に占める日本製の割合は2021年の約3割から2割強に低下したが、輸入額は逆に約1.5倍に増加した。精密部品の一部では中国製がわずか5%程度。「人工知能(AI)投資ブームで日中間の取引も増えた」(日本の半導体大手)との声も出ており、日本の技術を手放せない構図だ。
 レアアースの世界供給を握る中国。日本は調達先の多様化を図るが、なお翻弄(ほんろう)されている。10年の尖閣諸島沖での漁船衝突事件後、中国産の割合を約9割から6割強に引き下げた。だが、高性能磁石で世界2位の生産国である日本も「原料の精製・加工は中国頼み」(機械大手)。今年は、中国による日本向け輸出規制の強化で電気自動車(EV)用磁石の原料の一部が入手できず、日本企業はオーストラリア産の確保や代替技術の開発を急ぐ。
 ◇日系、撤退・再編も進出続く
 供給網を見直す日中も、新たな商機を探る。外食のスシローは中国大陸の店舗数を135店に拡大し、ミスタードーナツも9月に7年ぶりに再進出。一方、自動車部品では住友電気工業や小糸製作所が事業を見直すなど、「業種による明暗が分かれた」(中国信用調査会社の利墨上海)形だ。中国勢もEV大手の比亜迪(BYD)や電子商取引大手のアリババ集団などが日本市場に攻勢をかける。
 こうした動きとは対照的に、外国企業の対中直接投資は過去10年で最低水準に沈んだ。25年の実行額は22年のピークから約4割減少。中国商務省は「地政学的対立や保護主義」を逆風に挙げる。米中摩擦のあおりで撤退・再編も進み、日系企業数はここ2年間で2割以上減った。
 中国政府は投資減少を食い止めようと外資誘致を進めるが、経済安保上の規制は厳格化する方針だ。復旦大学の王広濤副教授(日本研究)は、日中関係が「低強度の対立を特徴とする『新常態』に移行する」とみる。政治的な緊張が日常化する中、実利と安保をどう両立させるか。両国の政府と企業は「選択的依存」の線引きを絶えず迫られる。(北京時事)。 
〔写真説明〕7年ぶりに中国本土に再進出したミスタードーナツの新店舗=9月28日、上海