中国製のL-15練習機は、空自T-4後継候補のイタリア製M-346とそっくりです。実はロシア機も加えた3機種は「血縁」関係に。練習機ならではの国際的な開発事情を解説します。
イタリアとロシアの“兄弟”から生まれた“いとこ”
中国が開発したジェット練習機L-15は一見すると、航空自衛隊のT-4練習機の後継機候補と目されるイタリア製のM-346練習機にそっくりな姿をしています。それもそのはず、これら2機種には「血縁」関係があるのです。そこには、練習機という機種ならではの、国家間の航空機開発の形が見えてきます。
中国のL-15は、大きな風防が練習機らしい姿で、操縦のしやすさを感じさせます。その高い運動性は、アラブ首長国連邦(UAE)空軍の曲技飛行チーム「アル・フルサン」が採用していることからも伺えます。操縦システムも現代の戦闘機と同じ、パイロットの操作を電気信号を用いて動翼に伝える「フライ・バイ・ワイヤ」方式を採用し、背の高い垂直尾翼により、機首を大きく上げた状態でも運動性が確保されるなど、練習機としてのニーズに合致した機体となっています。
しかしこのL-15の全体的な姿は、イタリアのレオナルド社が開発したM-346練習機によく似ています。さらに、そのM-346にもそっくりな機体があります。ロシアの練習機Yak-130です。実はこれら3機種は、設計のルーツが一緒なのです。
もともとは1980年代、新たな練習機を求めていたソ連(現ロシア)のヤコブレフ設計局と、同じく新型練習機を開発しようとしていたイタリアのアエルマッキ社(現レオナルドの子会社)が、1992年にパートナーシップ協定を結んだことから設計が始まりました。
しかし、最終的な機体の仕様で意見が異なり、両者の共同開発は別々の道を歩むことになります。この結果、Yak-130とM-346という“兄弟”のような機体が誕生しました。その後、中国がジェット練習機を開発する際にヤコブレフ設計局の協力を得たことから、L-15はYak-130と似た姿になりました。そのため、3機種の関係はYak-130とM-346が“兄弟”、そしてM-346とL-15は“いとこ”といえるかもしれません。初飛行はYak-130が1996年、M-346が2004年、L-15は2006年でした。
日本の空にも“親戚”が飛ぶ日に?
イタリアとロシアという、政治体制が異なる国が一緒に航空機を開発できたのには理由があります。それは、練習機が戦闘機のように高度な索敵レーダーや武器の管制装置を搭載しないため、機密情報が流出する危険が少ないという特性にあります。
この「開発や購入のハードルが戦闘機よりゆるい」という特徴は、機体の購入においても同じことが言えます。それを示したのが、前出のUAEです。
UAEは2026年2月のアメリカとイスラエルによるイラン攻撃で親アメリカ路線へ戻ったものの、それまではアメリカ一辺倒から脱却し、“多方面”の国家関係を模索していたとされまています。L-15の購入は、こうした中で行われました。アメリカからの兵器購入を減らしても、練習機のような高度なレーダーなどを持たない機種であれば政治的な影響は少ない、と判断されたのが背景にあると見られています。
これは中国にとっても、輸出の実績をつくる絶好の“商機”を得たことになります。
練習機をめぐる国際的な動向は、現在の日本にも関わってくる可能性も否めないと筆者は考えています。日本は2026現在、航空自衛隊でアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」も使用するT-4練習機の後継機を模索しており、イタリア製のM-346もその候補機と目されています。
選定の行方はまだ分かりませんが、もしM-346が採用されることになれば、その“兄弟”であるYak-130がロシアで、“いとこ”にあたるL-15が中国で、それぞれ飛んでいる状況になります。ルーツを同じにする機体が日本海を挟んで飛び交い、さらに日本での採用も狙っているという事実は、練習機の国際的な動向を示すものであり、興味深くもあります。