京都鉄道博物館では常設展示だけでなく、引込線を利用して多種多様な車両などを期間限定展示しています。今回はJR東日本の車両を初展示しました。その車両とは!?
JR東日本の鉄道クレーン車を特別展示
京都鉄道博物館(京都市下京区)は、2016年4月に開館してから10年が経過しました。博物館には車両を館内に引き込んで展示ができる引込線があり、開館以来JR西日本を中心に、JR各社や私鉄の鉄道車両、さらに軌陸車やタクシーといった自動車も期間限定で展示し、鉄道にとどまらず幅広い企画を展開してきました。10年間に特別展示してきた鉄道車両(保守用車等は除く)数は70種に及びます。
そして今回、71種目の特別展示に選ばれたのは、JR東日本の車両です。JR各社からは今まで、JR東海、JR四国、JR九州、JR貨物の車両展示がありましたが、JR東日本の車両は初めてです。展示は2026年10月29日に始まりました。
その車両の形式名は「KRC810N」。聞きなれない形式ですね。この車両はJR東日本が保有する鉄道クレーン車です。国鉄時代には「操重車」と呼ばれていた保守車両で、かつてソ80やソ300という形式がありました。
KRC810NはドイツKirow(キロウ)社製です。クレーン車本体+ワゴン車で運用され、ワゴン車は運転台付きの無蓋車で、クレーン車のブームのバランスを取るカウンターウエイトを搭載します。このクレーン車の特徴をいくつか紹介すると、架線下でも干渉しないよう、わずかな空間でブームを水平に伸ばしても十分な吊上げ能力を有し、ホームなどの障害物がある状態でも“脚”であるアウトリガーが4本ではなく2本でバランスを保てます。
KRC810NがJR西日本管内に“出張”したのは、琵琶湖線(東海道本線)山科駅改良工事により、ホーム設備や分岐器新設による吊り上げ作業が必要となったためです。山科駅では関空特急「はるか」の山科駅折り返し発着が可能になるよう、北側にホーム1面を新設するなど構内を大幅に改良します。完成すると山科駅で「はるか」から地下鉄東西線に乗り換えられるようになり、京都駅の混雑緩和や観光アクセスの改善が期待されています。
会社の垣根を越えて企画実現
JR西日本では鉄道クレーン車を所有するJR東日本と協力し、初の試みとして会社をまたいで貸し出されました。関東からJR貨物の甲種輸送によって運ばれ、10月初旬から山科駅で工事に従事し、その作業が終了したタイミングでの展示となりました。この展示は会社の垣根を越えた活躍や、縁の下の力持ち的存在の保守用車両のアピールにもつながり、鉄道クレーン車の貸し出し計画の準備段階から展示企画も並行して進行しました。
「JR東日本様、JR貨物様の多大なるご理解ご協力によって今回の展示を実現することができました。調整事項がたくさんありましたが、特にクレーン車が特殊な形状のため、入換の際、操車担当が通常とは異なる位置に乗り込む必要があることなどが挙げられます」と、引込線展示を担当するJR西日本コーポレートコミュニケーション部鉄道文化推進室の髙木優希さん。
展示期間は11月2日(月)までと、特別展示としては短期間です。工事の計画に展示企画が合体することで、返却する際の甲種輸送の調整など、会社をまたいだ調整作業に少々骨が折れたようですが、展示を通じて山科駅の改良工事と保守車両に触れられ、日本の鉄道をより深く知る機会が生まれました。
「特別展示が始まり、滅多に見られない車両ということもあり、保守車両好きのお客様はもちろん、それ以外にも多くのお客様が足を止め見学されています」と、京都鉄道博物館展示資料課の廣田琢也学芸員はコメントしています。
11月1日(日)にはJR西日本大阪工事事務所による山科駅改良プロジェクトのPRブースが設置されます。展示期間はわずかですが、西日本では滅多に見られないJR東日本のクレーン車を間近に観察できます。