漁船や大型船の操縦席にあるガラスの中の「謎の丸い枠」。実はモーターで毎分約1900回転する「旋回窓」という装置です。ワイパーと違って視界を遮らない理由と、かつて鉄道でも使われた理由を解説します。
高速回転で波しぶきを弾く「最強の窓」
漁船や大型船の操縦席(ブリッジ)を外から見ると、四角い窓の中に一つだけ「丸い枠」がついたガラスがあることに気づくかもしれません。これは「旋回窓(せんかいまど)」と呼ばれる装置です。
驚くべきことに、この丸いガラス部分はただはめ込まれているのではなく、中心部などに設けられたモーターによって高速で回転しています。製品によっては毎分1900±200回転(rpm)という仕様のものもあり、まさに「回る窓」なのです。
その仕組みは非常にシンプルで、回転によって生じる強力な「遠心力」を利用しています。窓に付着しようとする雨や激しい波しぶき、雪などを外側へ弾き飛ばし、クリアな視界を保つ仕組みです。これは、洗濯機の脱水槽が水を飛ばすのと同じ原理と考えるとわかりやすいでしょう。
英語では「Clear View Screen(クリア・ビュー・スクリーン)」とも呼ばれ、国内メーカーでは「大航計器製作所」「布谷計器工業」「英和社」「博電社」などが製造しています。
自動車でおなじみのワイパーは「往復運動」で水をかき出しますが、ブレードが目の前を通過する瞬間、どうしても視界が遮られてしまいます。一方、旋回窓は回転し続けることで水滴などを飛ばすため、悪天候時でも安定した視界を確保しやすいとされています。
また、ワイパーが凍結や着雪で動かなくなる可能性があるのに対し、旋回窓は高速回転の遠心力で雪なども振り飛ばし続けるため、厳しい気象条件下でも視界確保に貢献します。
ワイパーとは違う! なぜ「一部だけ」に設置?
これほど便利な装置ですが、なぜ全ての窓に採用されないのでしょうか。その理由は、旋回窓が荒天時にも操船に必要な最低限の視界を確保するための装備であり、操縦に特に重要な窓など「要所」に限定して設置されるのが一般的だからです。
また、構造上どうしても枠や機構部が視界に入ってしまうため、設置場所や数は船の用途に応じて慎重に決められます。
ちなみに、このユニークな「回る窓」は、船だけでなく、かつては鉄道車両でも採用例がありました。特に雪深い地域を走る機関車などで、視界確保のために取り付けられていたことがあるようです。
現在も船舶の安全な航行を支える重要な装備のひとつである旋回窓。次に船を見る機会があれば、どの窓が「回る担当」なのか、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
【動画】おお…視界がクッキリ! これが「旋回窓」の動く瞬間です