29日、Jリーグと日本サッカー協会(JFA)が、「レフェリング環境向上に向けた取り組みについて」と題したメディアブリーフィングを東京都内で開催した。
ブリーフィングには、Jリーグ執行役員の窪田慎二氏とJFA審判委員会の扇谷健司委員長が出席。レフェリング向上に向けての、今後の取り組みなどについて説明がなされた。
今回のブリーフィングに関しては、藤枝MYFCの槙野智章監督が24日に行われた2026/27明治安田J2リーグ第13節の徳島ヴォルティス戦後、『DAZN』のインタビューにて、審判員へ不適切な発言を行い、29日には2試合のベンチ入り禁止と罰金10万円の処分を受けることに。SNSで当該インタビューが拡散されると、審判員への誹謗中傷を含めたコメントが散見され、Jリーグ側も「看過できないものが多く見受けられた」とし、改めて周知するためのブリーフィング開催となった。
Jリーグは、価値向上のために様々な施策を実施。その中で、審判領域の質の向上は極めて重要な要素であると認識している。2024年当時には将来像の設計に向けたテーマとして、「プロ審判数の大幅拡大」、「海外審判の拡大」、「若手の早期養成」、「支援体制拡充」、「分母拡大」、「VARの今後検討」、「日本人審判の海外での活躍」の7つを掲げ、動いている。
その上で、審判員の質を上げるためには「知識・理解」、「スキル」、「準備・コンディション」、「契約形態・報酬」の4つがあると考えており、具体的にも動いている状況。フットボールの理解を深めるために、選手OBを『マッチクオリティ アセッサー』として審判員とのディスカッションを行ったり、プロフェッショナルレフェリーのキャンプや研修を実施する他、J1の担当審判員は29名全員をプロフェッショナルレフェリーにするなどしている。また、審判交流プログラムを活用して、世界各国のレフェリーを招いてJリーグの試合を裁いてもらうことでの技術向上の他、かつてプレミアリーグで主審を務めイングランド審判協会にも所属していたマイク・ライリー氏を育成枠のマネージャーとして契約し、審判員の育成にも力を入れている。育成枠とは、22〜30歳の若手審判員で、JFLからJ2、Uー21を割り当て。良い結果を残せば、その後のプロフェッショナルレフェリーへの道が拓けていく事となる。
一方で課題の1つとされているのが、J2でのVAR導入だ。今回争点となった事象もVARが導入されていればチェックが入る場面ではあったが、現状はJ1のみが対象に。ヨーロッパを見ても、スペイン、ドイツ、イタリアは2部もVARが導入されている一方で、イングランドとフランスは1部のみにVARが導入されている。VARの導入には、最低でも総額で年間6〜7億円が必要となり、さらにはスタジアムに関してもJ1レベルの品質を維持すると考えた際に、どこまで環境を整えられるかが不透明だ。加えて、VARの資格所有者を40名増員させなければならず、J2の10試合にVARとAVARを派遣するとなると、J3の審判員の質低下という影響も考えられるため、審判の母数全体の拡大も必要となる。現状はVAR資格者が44名、AVAR資格者が31名という現状だが、J1とJ2の20試合が同時開催と考えた場合は、それぞれ55名、61名に増員する必要がある。また、資格保有には1人当たり200万円の費用と6日間のトレーニングが必要となるため、簡単ではなく、審判員そのものの増員も考えなければならない状況だ。
窪田氏は費用や人材育成も必要となるとしながら、「VARライトやFVS(フットボールビデオサポート)はFIFAのプロトコルとしてまだトライアル段階を超えていない」と指摘。「カメラ台数が少ないため、ゴールライン上の判定など、ファンが期待する「J1レベルのVAR」と同じ効果が得られない可能性があり、慎重な検討が必要」と、簡単に導入することは難しいとした。
また扇谷氏もVARライトを試験導入しているポーランドの件を挙げ「我々は毎年ポーランドに行ったり、きてもらったりしていて、毎月話をしている」としながら、「VARであろうが、VARライトだろうが、見ている方や多くのファン・サポーターの皆さんは、VARだと思って見ている。VARであればわかることが、2部ではわからないというギャップが結構あると思う」と、VARと同等のものを求められることが多くなるだろうとコメント。「どうしても期待が高くなってしまう」と、テクノロジーを導入するにしても、難しさは残るだろうと見解を示した。
取材・文:菅野剛史(サッカーキング編集部)