海運大手3社のうち2社、さらに造船3社と発電事業者を巻き込んだ異例の7社合同プロジェクトが発足です。次世代燃料として注目される「アンモニア」を燃料とする新造船を連続建造します。
ライバル同士がタッグで「アンモニア燃料船隊」建造へ
次世代のクリーンエネルギーとして注目されているアンモニア燃料の普及拡大に向け、ライバル同士の大手企業がタッグを組みます。邦船大手の日本郵船と川崎汽船は2026年10月27日、国内エネルギー大手のJERAや外航船などの建造を手掛ける今治造船グループ、新来島どっく、旭洋造船と共に、アンモニア燃料自動車船4隻とアンモニア燃料供給(バンカリング)船の建造・運航に取り組むと発表しました。
一連の新造船は2030年を目途に竣工し、自動車船はトヨタ自動車などの完成車輸送へ投入される予定です。自動車業界が求める輸送の脱炭素化が背景にあると言えます。
日本郵船の曽我貴也社長は「本プロジェクトは、単に4隻のアンモニア燃料自動車船を建造することではない。バンカリング船の建造から自動車船へのシップ・ツー・シップ(STS)による燃料供給、さらにはアンモニアの調達まで含めた舶用アンモニアサプライチェーン全体を構築していく、まさにオールジャパンの取り組みだ」と胸を張ります。
今回のプロジェクトでは7社それぞれが持つ技術、知見、インフラを結集することが大きな特徴です。
旭洋造船が建造するアンモニアバンカリング船は日本郵船グループが保有・運航します。アンモニア燃料の積載容量は1万立方メートル。船舶間での円滑な燃料販売・供給を行うため、日本郵船と川崎汽船は舶用燃料の販売を行う合弁会社を設立します。
その合弁会社とバンカリング船の保有・運航会社が用船契約を結んで、アンモニア燃料自動車船へSTS方式での燃料供給を行います。
川崎汽船の五十嵐武宣社長は「LNG(液化天然ガス)燃料の場合、CO2(二酸化炭素)の排出削減量は3割から4割程度にとどまる。やはり船舶燃料としては、ゼロエミッションを期待できるグリーンアンモニアに大きな分があると思っており、将来的にはより多くのリソースをここに投入していきたい」とアンモニア燃料のメリットを強調していました。
設計を共通化して「一気に整備」へ!
アンモニア燃料自動車船は、新来島どっくが全体コンセプトや主要仕様を決定する基本設計を担い、今治造船や同社グループの日本シップヤード(NSY)と設計、思想を共有しながら、船型の共通化を図ります。1隻の積載台数は乗用車で7000台程度と見られます。
実際の建造では日本郵船が新来島どっくへ2隻、川崎汽船が今治造船とNSYへ2隻を発注。国内初となるアンモニア燃料自動車船として、従来の重油焚きも可能な「二元燃料(DF)エンジン」を搭載するとともに、太平洋航路をアンモニア燃料のみで航行可能な容量の燃料タンクを備える予定です。
これらの船は主に中部地区を拠点とします。日本郵船の曽我社長は「中部地区には自動車メーカーが多数ある。自動車メーカーは工場だけでなく、物流の途上で発生するCO2、いわゆるスコープ3の削減に大きく注目しており、中部地区を中心にアンモニア自動車船を走らせることは、そういったところにも貢献できると我々は見込んでいる」と話します。
JERAはインドから再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニアを調達。碧南火力発電所(愛知県碧南市)のアンモニア基地へ輸送してタンクへ貯蔵した後、新たに整備する払い出し設備からバンカリング船へと供給します。
国内船社のなかでも日本郵船は以前からアンモニアに注力しており、すでにアンモニア燃料タグボート(A-Tug)「魁」(278総トン)を東京湾の曳船事業に投入しています。11月にはジャパンマリンユナイテッド(JMU)有明事業所で建造が進められている世界初となる国産エンジンを搭載した「アンモニア燃料アンモニア輸送船(AFMGC)」が竣工する予定です。
そこにライバルである川崎汽船、造船業から今治造船と新来島どっくという大手同士が手を組むことになりました。業界横断的にアンモニア燃料船のさらなる整備が加速しようとしています。