2026年9月、中央線のない「生活道路」は法定速度30km/hに。いっぽう新東名には120km/hの区間があります。データが示すのは6車線化後の“車線の使い方”の変化でした。何が起きたのでしょうか。
最高速度120km/h化で「猛スピード」は増えたのか?
2026年9月1日、生活道路における自動車の法定速度が60km/hから30km/hに引き下げられました。対象は主に地域住民の日常生活に使われる、中央線などがない道路です。
そのいっぽうで、逆に最高速度が引き上げられた道路もあります。その代表が、新東名高速道路の静岡県区間です。
2020年12月22日、御殿場JCT~浜松いなさJCT間の約145kmで全線6車線化が完成し、同時に最高速度120km/hの本格運用が始まりました。対象となったのは、法定最高速度が100km/hだった普通自動車や大型乗用自動車などです(当時、大型貨物自動車などは80km/hのままでした)。
この引き上げをめぐっては、当初「多くのクルマが猛スピードを出すようになるのではないか」という懸念の声も聞かれました。では、実際の走行データはどうだったのでしょうか。
ナビタイムジャパンが2021年2月に公表したカーナビアプリのデータ分析(※本格運用開始約1か月後の平日と、前年同月などを比較)によると、上り線の浜松いなさJCTから御殿場JCTまでを走った普通車の所要時間は、約4分短縮していました。
いっぽう、普通車の「平均速度」は比較した全区間で上がったものの、実はいずれの区間でも105km/h以上には達していませんでした。なお当時、引き上げの対象外だった大型貨物車については、所要時間・平均速度ともに変化は見られませんでした。
120km/h区間を145km走って、短縮できたのはわずか4分。これだけ見ると地味な数字に思えますが、実は「別の部分」に劇的な変化が表れていたのです。
渋滞は約8割減! 劇的に変わった「車線の使い方」
「NEXCO中日本」が2025年12月の事業評価監視委員会で示した、6車線化事業の事後評価(6車線化前の2019年と完成後の2024年の比較)を見てみましょう。
まず、この区間の渋滞件数は、178回から27回へと「約8割」も減少しました。ゴールデンウィーク期間中の全車の平均所要時間も、下りが約12分、上りが約23分短くなっています。
さらに、大きな変化が出ているのが「車線の使われ方」です。
同社によると、新富士IC~新清水IC(下り線)の平日日中を比べたところ、最も左側の第1走行車線を走る大型車の割合が18ポイント増加しました。また、森掛川IC付近(上り線)の直線区間では、急加減速やハンドル操作を伴う「危険な追越行動」が約6割も減少したといいます。
同社はこれについて、6車線化によって速度差のある車両の「車線別の棲み分け(区分)」が進んだためとしています。現在、御殿場JCT付近~浜松いなさJCT付近では、大型トラックなどの通行を第一通行帯に指定する交通規制も実施されています。
なお、2024年4月1日からは、高速道路における大型貨物自動車などの法定最高速度も80km/hから90km/hへ引き上げられました(トレーラーなどは80km/hのまま)。
もっとも、新東名の「6車線化」と「120km/h本格運用」は同日スタートだったため、120km/h化だけの効果を明確に切り分けることはできません。それでも、普通車の平均速度は105km/h未満にとどまり、車線別の棲み分けが進み、危険な追い越し行動も減っています。
公表データから見えてくるのは、単純にクルマが高速化したという事実ではなく、ドライバーのストレスを減らす「交通全体の流れの劇的な改善」だと言えるでしょう。