「カーシェアならぬ“軍用機シェア”」だと…? NATOの巨大輸送機を「みんなで使う」新発想…防衛の常識を覆すか?

今、空き家がビジネスになる理由

NATOの一部加盟国で、高価な大型輸送機C-17を共同保有・運用する「SAC」というスキームが始動。限られた防衛予算で戦略空輸能力を確保する新たな取り組みです。

高価な大型輸送機を「みんなで使う」

 家や自動車、最近では電動キックボードまで、様々なシェアリングビジネスが登場していますが、ついに軍用の航空機にも“シェア”の動きが出てきました。北大西洋条約機構(NATO)の一部加盟国で、大型輸送機を共同で保有・運用する新しい取り組みが始まっています。

 この新しい取り組みは「SAC(Strategic Airlift Capability=戦略空輸能力)」と呼ばれるスキームです。SACは参加する12か国が費用と人員を出し合い、3機のボーイングC-17「グローブマスターIII」戦略輸送機を共同で運用するものです。拠点はハンガリーのパーパ基地に置かれ、傘下の重空輸航空団(Heavy Airlift Wing)が実務を担います。

 参加国は、費用負担や人員派遣の割合に応じて、C-17輸送機を自国の任務のほか、NATOや国連の活動のために利用することができます。

 ボーイングC-17のような大型輸送機は、大量の貨物を長距離かつ迅速に運ぶことができ、有事や大規模災害時の緊急輸送に絶大な能力を発揮します。しかし、その導入と維持には莫大な費用がかかるため、限られた防衛予算の中で装備できる国はごく一部に限られるのが実情です。

なぜ“シェア”する必要があるのか

 ヨーロッパではエアバスが軍用輸送機A400Mを開発・生産していますが、NATOの全32加盟国のうち、この機種を購入したのはイギリス、ドイツ、フランスの3か国にとどまっています。こうした背景から、複数の国が共同で資産を保有し、必要な時に利用するSACのようなスキームが生まれたのです。

 NATOでは、1982年からE-3A「セントリー」早期警戒管制機を運用していますが、これは全加盟国が共同で所有・運用する形をとっています。それに対し、SACはNATO加盟国のうち参加を希望する国だけで構成される点が大きく異なります。これは、防衛装備の運用における新しい形態といえるでしょう。

 高価な大型輸送機を複数の国家で共同保有することで、防衛資産を有効活用しようとするこの動きは、今後、他の装備品にも広がっていく可能性があると考えられます。