なぜエンジンが“タテ2段”? 異形の英戦闘機「ライトニング」常識破りの設計思想とは 上昇力は「F-15並み」?

カリフォルニアロール誕生はいつ

エンジンを上下に積んだ異形の戦闘機、イギリスの「ライトニング」。なぜこのような前代未聞の姿になったのでしょうか。そこには冷戦下ならではの“尖った”設計思想がありました。

すべては旧ソ連機迎撃のため

 アメリカをはじめ世界各国で導入されているF-35戦闘機の愛称は「ライトニング II」ですが、1950年代後半、イギリスでも「ライトニング」と名付けられたジェット戦闘機がありました。こちらのライトニングは、太めのF-35と対照的にスリムな外見だったものの、スリム化をとことん追い求めたためか、エンジンを上下に並べた前代未聞の姿をしていました。どんな理由でこのデザインとなったのでしょうか。

 イギリスのライトニングが初飛行したのは約70年前の1957年。この頃のジェットエンジンは今ほど性能が高くなく、ライトニングのエンジンも1基あたりの推力は約6tと、F-35のエンジンの半分にもなりませんでした。

 とはいえ、この時代はアメリカと旧ソ連の東西冷戦下です。旧ソ連の爆撃機が襲ってきた場合、素早く上昇・迎撃しなければなりませんでした。このためライトニングを設計した、現在のBAEシステムズにつながるイングリッシュ・エレクトリック社は、上昇力の確保へできるだけ空気抵抗を減らすことを最大の目的に据え、“尖った”設計で臨みました。

 その答えが、エンジンの上下配置でした。ライトニングを前から、あるいは後ろから見ると、それがよく表れています。ライトニングは機首から胴体の後ろまで、断面がほとんど同じ縦長でスリムな形のままです。エンジンを横に並べた戦闘機のように胴体の断面積が変化することがありません。前面から見たこの断面積を抑えることで、空気抵抗を減らしたのです。

 反面、上下に並んだエンジンは外すのに手間がかかり、整備の煩雑さを招きました。そのうえ、常識破りの姿ゆえに性能が犠牲になるという反動も出てしまったのです。

それでも上昇力は捨てがたかった

 ライトニングの胴体下の中央を見ると、まるでポッコリお腹のように膨らんでいます。これは、スリム化のリバウンドで胴体の内部スペースに余裕がなくなり、燃料タンクが収まりきらなかったためです。

 反動は同じように主翼にも表れています。主車輪は当然、胴体に収めることができず主翼に収容せざるをえなかったのですが、主翼自体が胴体の中ほどという高い位置にありました。このため主車輪の脚柱を長くせざるを得ず、その長い主脚を引き込むようにしたことで、主翼下に兵器や増加タンクを付けるスペースがなくなってしまいました。

 このため、ライトニングは航続距離を延ばす際に、他の戦闘機では例を見ない増加タンクを、まるでおんぶでもするように主翼上に付けたのです。空中給油装置も機体のスペースに余裕があれば引き込み式にしたかったのでしょうが、それもできず、左主翼の内側から突き出るように付いています。

 とはいえ、最高速度はマッハ2.27を出し、上昇力は1秒間に254mとF-15に匹敵する性能も誇り、防空戦闘機として一定の評価もされました。

 もしライトニングが現在のF-35のように、空中戦や地上攻撃など複数の任務を器用にこなすマルチロール性を求められ、高い推力のエンジンを装備することができたとしたら、“尖った”設計をすることもなく、エンジンの上下配置も機体各部への「反動」もなかったでしょう。これを思えば、ライトニングは約70年前の技術の限界に挑み、目的を達成した、まずまず成功した機体だったと言えるのかもしれません。