「ドローンを撃ち落とすドローン」海自が超速で調達へ!? 「レーザー兵器は後回し」「陸空より海自が優先」そのもっともなワケ

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防衛装備庁が「迎撃ドローン」にテラドローンの提案を採択し、異例のスピードで海自へ納入予定です。自爆ドローンの脅威に対し、レーザー兵器よりも迎撃用ドローン、そして陸自・空自より海自という“対処のステップ”を踏みます。

異次元スピードで戦力化へ

 防衛装備庁は2026年8月26日、「迎撃ドローン早期取得プログラム」に、株式会社テラドローンの提案を採択したと発表しました。迎撃用ドローンとはイランやロシアが使用している「シャヘド」などの自爆突入型攻撃用UAS(無人航空機システム)に対し、自身も自爆突入して無力化するUASです。

「迎撃ドローン早期取得プログラム」は2026年6月15日にプログラムを立ち上げて、同年7月中に実証試験を完了し、8月に結果発表、9月には自衛隊への納入を開始するという、過去の防衛装備品とは異次元のスピードでの戦力化が予定されています。

 テラドローンが提案した「テラB1」は、同社が出資したウクライナのアメイジング・ドローンが共同開発した「テラA1」をベースに開発されたと見られています。「迎撃ドローン早期取得プログラム」で採用されたドローンには国産機であることが求められていました。

 テラB1は国産機とも言えるのですが、原型のテラA1がウクライナで迎撃実績を挙げていることに加えて、おそらく3Dプリンターの多用などで、テラA1よりも早いスピードで生産が可能になったことなども高く評価され、採択に至ったのだと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

「迎撃ドローン早期取得プログラム」で採択されたテラB1は、まず海上自衛隊に納入されます。自爆突入型攻撃用UASは陸上自衛隊の駐屯地や航空自衛隊の基地にも大きな脅威となっているのですが、にもかかわらず海上自衛隊から配備されるのは、当然のことながら理由があります。

なぜ海上自衛隊から?

 島国の日本は外国との国境を海でへだてられています。近年は自爆突入型攻撃用ドローンの性能が向上しており、遠距離・長時間を飛行できるタイプも登場しています。それ故に防衛装備庁は「迎撃ドローン早期取得プログラム」による迎撃用ドローンの取得に踏み切ったのですが、日本本土の陸上自衛隊の駐屯地や航空自衛隊の基地を攻撃できる自爆突入型攻撃用UASはまだ多くはありません。

 これに対し、沖合に展開する海上自衛隊の艦艇のほうが、より近くでその脅威を受けることとなります。

 2025年4月28日、イエメン沖を航行中のアメリカ海軍の原子力空母「ハリー・S・トルーマン」が、イスラム教武装勢力「フーシ派」の攻撃を回避しようとして急速な回避運動を行った際、甲板上で牽引移動中だったF/A-18「スーパーホーネット」戦闘機が制御を失い、そのまま艦の舷側から滑り落ち、アデン湾の波間へ没するという事故がありました。

 この際フーシ派が使用した兵器については諸説あるのですが、仮にイランから供与されたシャヘドが使用されていた場合、1機300万円から500万円程度のシャヘドで、1機75億円から90億円程度のスーパーホーネットを喪失させればフーシ派にとっては大金星ですし、固有の領土ではない公海での軍事行動の責任を問うことは現実問題として困難です。

 基地公開などで公開された軍艦や護衛艦からは「でっかいなあ」という印象を受けてしまいがちですが、海原では脆弱な存在です。とりまく脅威を低減するという目的に優先順位を付けた場合、本土の駐屯地や基地より、公海を航行する護衛艦を優先するのは当然だと思いますし、それゆえにテラB1は海上自衛隊から配備されることになったのでしょう。

低コスト「レーザー兵器」の理想と現実

 海上自衛隊と防衛装備庁では、ドローンや迫撃砲弾などを迎撃・無力化するための「高出力レーザーシステム」の艦載化に向けた研究や海上実証試験が進められています。またアメリカ海軍のドック型揚陸艦「ポンセ」のように、対ドローン用レーザーシステム「LaWS」を搭載した艦も出現しています。

 レーザーの照射コストは、迎撃用ドローンはもちろん機関砲弾などよりも安いのですが、「ポンセ」は老朽化もあって2017年に退役し、その後筆者の知る限り、レーザー照射装置を実用兵装として装備した艦は登場していません。

「艦艇搭載用のレーザー兵器は、ビームが水蒸気で威力が減衰するし、レーザーの照射に必要な大容量の電力をどう賄うのかという問題もあるので、実用化は簡単ではないんだよ」

 これは、2009年のパリエアショーでヨーロッパの大手防衛メーカーMBDAの担当者が説明してくれた話です。このとき筆者は初めてレーザー照射装置の説明を受けました。

 そして2026年現在、世界の海軍ではやはり、レーザー兵器より迎撃用ドローンの採用が増えています。

 アメリカの防衛メディアのMilitary.comは2025年3月に、アメリカ海軍が2025年に展開予定の空母打撃群に迎撃用ドローンの「コヨーテ」と「ロードランナー」を配備すると報じました。2025年8月にはアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ベインブリッジ」と「ウィンストン・S・チャーチル」にコヨーテの発射装置が搭載されていることが確認されています。

 またスペインの防衛メディアInfodefensaは2026年9月5日、スペイン海軍がスペイン企業デスティナスの開発した艦載迎撃用ドローン「ホーネット1」について導入契約を締結したと報じています。デスティナスの迎撃用ドローンについては、オランダなど他のヨーロッパ諸国の海軍からも引き合いが来ているようです。

 ランニングコストの面などから考えれば、レーザーが将来のUAS対策用主力艦載兵器になることは間違いないと思いますが、実用化にあたっては超えなければならないハードルも多く、そのハードルをクリアできるようになるまでは、テラB1やコヨーテのような迎撃用ドローンは、対UAS用主力艦載兵器を務めることになるのだと思います。