混雑率177%で5年連続ワースト! 「電車増やせばいいじゃん」が通用しない三つの壁

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朝の通勤電車はいつもギュウギュウ詰め。「もっと本数が増えればいいのに」と思った人は多いはずです。しかし鉄道は、そう簡単には増発できません。どのような壁があるのでしょうか。

混雑率ワーストでも増発できず

 毎朝の通勤電車で、身動きが取りにくいほどの混雑にうんざりした経験は、誰しもあるのではないでしょうか。そのようなとき「本数を増やせばいい」と思うのは自然なことです。ところが、鉄道事業者はそう簡単に列車を増やせません。それを象徴するのが、東京都交通局が運営する新交通システム「日暮里・舎人ライナー」です。

 この路線は近年、国土交通省の混雑率調査でワースト1位が続いています。2024年度の調査では、赤土小学校前→西日暮里間で、最混雑時間帯1時間の混雑率が177%と示され、2020年度から5年連続で最も高い値となりました。

 東京都交通局も、手をこまねいていたわけではありません。既存の12編成をロングシート化し、1編成あたりの定員を245人から262人に増やしています。座席の配置を変えて、少しでも多くの人を運ぶようにする工夫です。

 しかしそれでも、混雑は解消しきれていません。ここからは、列車を増やすことの何が難しいのかを見ていきます。

 鉄道の増発を難しくしているのは、大きく分けて「車両」「乗務員」「線路の容量」という三つの壁です。

 一つ目の壁は「車両」です。本数を増やすには、走らせる車両そのものを用意しなければなりません。しかし朝のラッシュに合わせて車両をそろえると、その車両は混む時間帯しか使えず、昼間や夜は車両基地で眠りがちです。高価な車両がわずかな時間しか働かないとなると、費用がかさみます。増えた車両を留めておく車両基地の広さにも、限りがあります。

 二つ目の壁は「乗務員」です。車両があっても、運転士や車掌がいなければ列車は走りません。乗務員には勤務時間などの決まりがあり、簡単には増やせません。国交省も、地方部では運転士不足により運行本数を減らす事態が起きていると説明しています。

 ちなみに日暮里・舎人ライナーは自動運転で、普段は乗務員が乗っていません。つまりこの路線では、乗務員の壁は比較的小さいといえます。それでも混雑が解消しないところに、車両や設備側の制約の大きさがあります。

増発を阻む「三つ目の壁」

 三つ目が、最も越えにくい「線路の容量」という壁です。

 線路には、一定の時間に走らせられる列車の本数に上限があります。これを「線路容量」と呼びます。列車は安全のため、前を走る列車と一定の間隔をあけて走るため、いくら需要があっても、詰め込める本数には限りがあるのです。

 しかも、速度の違う列車が混じる路線では、さらに増やしにくくなります。速い急行と遅い各駅停車が同じ線路を走ると、急行が各停に追いつかないよう間隔をあける必要があり、その分だけ走らせられる本数は減ります。

 日暮里・舎人ライナーは各駅停車だけが走るため、この速度差の問題はありません。国交省の2024年度調査では、最混雑時間帯に5両編成を19本走らせていることが示されています。それでも抜本的に輸送力を増やすには、車両基地や駅舎の拡張といった大がかりな工事が必要で、ロングシート化以上の対策は難しいとされています。

 そこで考え出されたのが、線路に頼らない方法でした。東京都交通局と足立区は2025年12月から2026年3月にかけて、朝ラッシュ時に直行バスを走らせる実証実験を実施。江北駅前から西日暮里駅前を経て日暮里駅前まで、1日3便を運行しました。ただ、区によると1便の定員は45人程度で、鉄道の輸送力を直接置き換えるものではなく、混雑緩和を補助する対策といえます。

 つまり列車の増発は、単に時刻表に列車を1本書き足すだけでは済みません。朝のわずかな時間のために車両を用意し、置き場所を確保し、乗務員を手配し、安全に走れる間隔を守り、駅で乗り降りできる時間も見込む必要があります。混雑率ワーストの路線でさえ簡単に本数を増やせないのは、こうした制約が同時にぶつかるためです。

 何気なく「もっと増やして」と願うその裏側には、簡単には越えられない、いくつもの壁があります。