飛行機の燃料を巡る動きが、日本のエンジンメーカーにビジネスチャンスをもたらすかもしれません。航空燃料の“無鉛化”がそのカギです。
いまだ「有鉛ガソリン」で飛ぶ飛行機
かつて自動車の燃料には、オクタン価(エンジンの燃焼室内における「ノッキング」と呼ばれる異常燃焼の起こりにくさを表す指標)を上げるために鉛が添加されていました。しかし、鉛は人体に有害であることから無鉛化が進められ、現在ではレギュラーはもちろん、ハイオクガソリンも含めて完全に無鉛化が達成されています。
ところが、ピストンエンジンを搭載する一部の航空機では、事情が異なります。自動車よりも高いオクタン価が要求されるため、今でも有鉛ガソリンが使われているのです。全体の消費量は自動車に比べて遥かに少ないものの、有害な鉛を大気中に放出していることに変わりはありません。
この状況を問題視したのが、アメリカ環境保護庁(EPA)です。EPAは航空ガソリンの無鉛化を勧告し、それを受けてアメリカ連邦航空局(FAA)は2030年を目標に航空ガソリンを完全に無鉛化すると発表しました。
長期間の試験を経て、鉛化合物を添加せずに100オクタンを達成した無鉛航空ガソリン「G100UL」が承認され、すでに一部の空港で販売が始まっています。しかし、大きな課題は価格です。
アメリカでの自動車ガソリンの平均価格が1ガロンあたり約4ドルであるのに対し、従来の有鉛航空ガソリンは約6ドル。そして新しい無鉛ガソリンG100ULは、さらに0.7~1.05ドル高く、1ガロンあたり7ドル前後にもなります。2030年に向けて無鉛化の流れは止められず、航空燃料がさらに高騰することは確実な情勢です。
救世主は「クルマのエンジン」?
そこで再び注目されているのが、自動車などのエンジンを航空機に転用する動きです。これなら高価な航空ガソリンではなく、比較的安価な自動車用燃料が使えるようになります。
自動車エンジンの航空機への転用は20年以上前から行われており、改造に必要な部品を供給する会社も存在します。航空エンジンとしての認証を持たないエンジンであっても、アメリカなど航空先進国では実験機として使用することが可能です。
最近では、ヤマハ製のスノーモービル用エンジンを航空機に転用する動きが注目されています。このエンジンは自動車燃料が使えるという経済的なメリットに加え、航空機を飛ばすのに十分な出力を備えています。
2030年以降、自動車燃料と航空燃料の価格差は現在よりもさらに広がることが確実視されています。そのため、自動車燃料が使える日本製エンジンへの需要は、今後増える可能性があります。
これは、日本のメーカーにとって航空エンジン市場へ参入する千載一遇のチャンスとも言えるでしょう。もちろん、航空エンジンとしての認証を取得するには、多額の投資と長い時間が必要です。しかし、これは全ての航空エンジンメーカーが通ってきた道です。
筆者は、日本製航空エンジンの認証取得を推し進めるべきだと考えています。経済産業省のサポートも必要でしょう。自動車燃料が使える日本製エンジンが認証を取得すれば、世界中の多くの小型機に搭載されることが可能になり、ユーザーから歓迎されることは間違いないでしょう。
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