自衛隊の輸送機が「ミサイル大量発射」の攻撃機に!? 防衛省の新たな「ハイ・ロー・ミックス」構想とは

オフィス需要活発化でREIT注目

防衛省の2027年度概算要求で注目を集める「安価なスタンド・オフ・ミサイル」の導入構想。米アンドゥリル社の「バラクーダ」を念頭に置いた輸送機からの空中発射戦術や、低コストUAVと組み合わせた運用手法を解説します。

新たなスタンド・オフ・ミサイルを防衛省が説明

 防衛省は8月31日、令和9(2027)年度概算要求の概要を公表しました。今回の概算要求では、2022年12月に策定された現在の「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」、いわゆる「安保三文書」が年内改定に向けて検討中であることから、それら三文書の改訂後の内容に左右されると考えられる事業などについては、年末までに予算編成過程で検討することとし、金額と数量を示さない事項要求となったのが特徴です。そして、「新しい戦い方への対応」、「持続的な対応能力」、「防衛力の基盤」という3つの柱を重視しています。

 今回は、この3つの柱のひとつ「新しい戦い方」のうち、数多くの新規事業が盛り込まれた「スタンド・オフ」のなかで特に目を引いた「安価なスタンド・オフ・ミサイルの開発・取得」について見てみましょう。

 そもそもスタンド・オフ防衛能力とは、侵攻する艦艇などを早期・遠方で食い止めることを可能にするとともに、相手国への反撃に活用することも想定されており、「抑止力発揮の切り札」という位置付けです。

 防衛省は、その整備にあたって補完戦力としての巡航ミサイル「トマホーク」を除き、国産スタンド・オフ・ミサイルの導入を優先しており、これまでに12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型、艦発型、空発型。なお地発型は25式地対艦誘導弾として制式化)、25式高速滑空弾、極超音速誘導弾、潜水艦発射型誘導弾を開発・取得してきました。そして、2027年度概算要求に新たに計上された事業が「安価なスタンド・オフ・ミサイルの開発・取得」です。

 この事業では、高価かつ高性能な弾薬を補完する低コストなスタンド・オフ・ミサイルを国産開発するとともに、早期の能力獲得を目的に海外製を取得するとしています。前者はこれから開発するので、どのようなミサイルになるのか不明ですが、後者に関して、防衛省の担当者は、アメリカ企業アンドゥリルの巡航ミサイル「バラクーダ」の名前を例に挙げ、戦闘機ではなく輸送機から空中発射する構想を明らかにしています。

重視されているスタンド・オフ防衛能力

「バラクーダ」は、低コストで大量生産が可能な巡航ミサイルですが、ターボジェットエンジンを搭載し亜音速飛行が可能です。すでに射程と発射プラットフォームの違いにより、「バラクーダ-100」「バラクーダ-250」「バラクーダ-500」の3種類があるなかで、防衛省が念頭に置いているのは、射程500海里(約930km)以下の「バラクーダ500」です。

 この「バラクーダ500」は、空中投下型弾薬パレットを使用し、輸送機の貨物室からの発射を想定したものです。そして、同社は今年(2026年)7月にイギリスで開催されたファンボロー国際航空ショーにおいて、ブラジルのエンブラエルとの間で「バラクーダ500」をC-390輸送機に統合する取り組みを進めるための覚書を締結しています。

ただし、防衛省の担当者は、発射プラットフォームについてC-390などの名前を挙げず、既存の輸送機を活用する方針であることを示しました。これに関しては、保有機数やペイロードなどを鑑みて国産機C-2が確実視されており、空自輸送機の活用の場が広がると言えるでしょう。

 ちなみに、2027年度概算要求では、安価なスタンド・オフ・ミサイルと似た事業として「低コストなスタンド・オフ防衛用UAVの開発」も新規事業として盛り込まれています。

 この事業では、民生部品の活用や民生品の設計・製造技術の適用により、安価で短期間に大量生産可能な、スタンド・オフ・ミサイルと組み合わせて使用できるUAV(無人航空機)の実現を目標としています。こちらの速度は亜音速以下であり、弾頭やペイロードの点でもスタンド・オフ・ミサイルと比べ見劣りします。

 ただ、高性能かつ高価格のスタンド・オフ・ミサイルと、安価なスタンド・オフ・ミサイルやUAVを組み合わせることで、防衛省では、十分な数量を確保するとともに、自衛隊の運用の柔軟な運用を可能にする一方、相手方には迎撃を困難にさせる効果を狙っている模様です。

 例えるなら、これは日本版「ハイ・ロー・ミックス」と言えるのかもしれません。