熊本地震では、商業施設「イオンモール熊本」(熊本県嘉島町)の爆発事故や断水地域の窮状などが大きく報道される一方、被害の実情が十分に伝わっていないとの危機感を募らせる地域もある。ふるさと納税やボランティアの集まり具合に差が出ているといい、関係者からは「埋もれた地域があることを伝えたい」との声が上がる。
県によると、地震の死者は計38人。うち9人が八代市の日本製紙八代工場、7人がイオンモール熊本で死亡した。宇城、氷川、八代の3市町では約1カ月断水が続いた。
八代市や宇城市に隣接し、震度6強の揺れに見舞われた美里町でも、死者は出なかったものの、約3割の世帯が家屋の被害を受けた。建物の公費解体などに必要な罹災(りさい)証明書の申請件数は住家だけで927件(22日時点)に上り、既に2016年の熊本地震の時を上回る。特に同町中郡の下原地区は、応急危険度判定で「立ち入り危険」を示す赤い張り紙が目立つ。
同地区にある渡辺文生さん(73)の自宅は、玄関の屋根が倒壊し、壁の大部分が崩れ落ちた。妻と共に片付けに励むが、「もうここには住めない」と肩を落とす。公費解体など行政の対応が気がかりだといい、「ここだけが取り残されたらいかん」と語気を強める。
復興財源を確保する上で、同町が原資の一つとして期待するのがふるさと納税だ。ある被災自治体では数億円の寄付が集まったが、同町への災害支援の寄付金は約2000万円(24日時点)にとどまり、財源確保に苦慮しているという。
上田泰弘町長は、報道などで被害が取り上げられるかどうかが支援の広がりに影響すると指摘。「埋もれている、光が当たらない地域があることを伝えられれば」と訴えた。
同様の悩みを抱える地域は熊本市内にも。市内の罹災証明書申請件数の約半数を占める南区は、道路の地割れや液状化などが細い路地に集中。住宅は基礎部分が崩れ、柱が折れるなど深刻な被害が出ているが、塀や植木の陰に隠れ、外からは分かりにくい。南区の富合校区自治会連合会長の荒木養一さん(75)は「被害が見えづらいためか、八代市や氷川町に比べ、取り上げられていない」と吐露する。
大西一史市長は18日の臨時記者会見で、南区の被害に関する報道が少ない影響について、「ボランティアなど支援の目が向きにくいことがあった」と明かした。
〔写真説明〕地震の影響で玄関の屋根が倒壊した自宅を見詰める渡辺文生さん=16日、熊本県美里町
〔写真説明〕取材に応じる熊本県美里町の上田泰弘町長=16日、同町
〔写真説明〕地震で地割れした住宅の庭。フェンスに覆われているため、敷地の外からは被害状況が分かりにくい=17日、熊本市南区
〔写真説明〕熊本地震の影響で基礎部分が崩れた住宅=17日、熊本市南区
〔写真説明〕熊本地震の影響で液状化した道路=17日、熊本市南区