1942年の水没事故で朝鮮半島出身者136人を含む183人が犠牲となった海底炭鉱「長生炭鉱」(山口県宇部市)で、遺骨収集が進んでいる。市民団体主導の潜水調査で頭蓋骨などが収集され、日韓両政府はDNA型鑑定に取り組む。井上洋子代表(76)は「市民の力でDNA型鑑定までこぎ着けた。国には今後、国主体での捜索と収容を決断してほしい」と話す。
長生炭鉱は14年に開鉱したが、第2次世界大戦中の42年2月3日、炭鉱の出入り口である坑口から約1キロ先の坑道で異常出水に伴う水没事故が発生。坑口は遺体を残したまま閉鎖された。
潜水調査を進めるのは、91年設立の市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」。国に坑内調査を求めていたが、日本政府は「遺骨の位置が分からず困難」としたため調査に乗り出した。
同会はネットなどで資金を募り、民間人ダイバーの協力のもと潜水調査を重ねた。25年8月には、「ピーヤ」と呼ばれる排気・排水筒からダイバーが潜り頭蓋骨などを収集。日本政府に対しては、日韓共同でのDNA型鑑定を要請した。
日韓両首脳は、今年1月の会談で身元確認に協力することで一致し、5月にはDNA型鑑定の手続きを進めることも合意した。その後、日本の外務省や韓国の専門機関などの担当者が山口県を訪れ、遺骨から採取したサンプルを持ち帰り、鑑定を進めている。
ただ、2月に宇部市内で開かれた追悼式典の際、遺骨収集に向けて潜水調査を行っていた台湾人ダイバーが死亡する事故が発生。これを受け同会は調査を中断し、来年1月末予定の追悼式典までは調査再開については議論しないことを決めた。
同会は現在、炭鉱跡地周辺を平和公園として整備する構想を掲げ、ピーヤの補修などを計画している。井上代表は「文化財として保存し、歴史的な場所にしたい」と話している。
〔写真説明〕水没事故が起きた海底炭鉱「長生炭鉱」の「ピーヤ」と呼ばれる排気・排水筒で行われた遺骨の潜水調査=2025年6月18日、山口県宇部市(小型無人機で撮影)
〔写真説明〕インタビューに応える「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」の井上洋子代表=7月31日、山口県宇部市
〔写真説明〕長生炭鉱の潜水調査で台湾人ダイバーが死亡したことを受け、市民団体の集会で黙とうする参加者ら=5月23日、山口県宇部市