真夏でも寒い!「日本一高い国道」の先にある“鉄道”に乗ってきた! 標高2000m“エモいゴンドラ”3種乗り継ぎルートとは

”値上げに強い”飲食店に注目

長野県の避暑地・志賀高原。3本のリフトを乗り継ぎ標高2000mを目指す「ゴールデンライン」は、「くだって、のぼって、のぼる」という面白いルートです。“珍しいゴンドラ”たちが迎えます。

リゾートエリア志賀高原のゴンドラリフト「ゴールデンライン」

 今年の夏も、都市部をはじめとして各地で猛暑が続いており、今後もまだ最高気温が高い日が予報されています。涼しいどころではなく「寒いくらい」と感じられる避暑地を求めて向かったのが、圧倒的な大自然を感じられる長野県の山岳リゾートエリア「志賀高原」です。

 環境省が志賀高原地域として管理する長野県山ノ内町、木島平村、野沢温泉村、栄村の一部にかかるエリアは、標高約1300〜2300mと高いため、7月から8月の最低気温は約10〜15度、最高気温は25度前後という涼しさです。真夏でも30度を超えることはまずありません。

 そこで志賀高原ではこの素晴らしい環境を生かし、冬季にはスキー客を運ぶ搬器の一部をサマーシーズンにも運行。中でも3本のリフトを乗り継いで標高2000mの東館山山頂を目指す「志賀高原ゴールデンライン」は高い人気を誇っています。

 志賀高原ゴールデンラインは志賀高原中央エリアに建つ「志賀高原山の駅リゾートセンター」から「東館山山頂駅」を結んでおり、全長400mの「志賀高原リゾートゴンドラ」、全長1047mの「ブナ平ゴンドラ」、そして全長1384mの「東館山ゴンドラリフト」で構成されています。乗車時間はそれぞれ4分・6分・7分で、リフト間の移動や乗り継ぎ時間を含めると片道約30分の空中散歩が楽しめます。

 その大きな特徴は「志賀高原リゾートゴンドラ」で山をくだり、「ブナ平ゴンドラ」と「東館山ゴンドラ」で山をのぼること。つまり「くだって、のぼって、のぼる」という面白いゴンドラです。鉄道好きが高じて索道(鉄道の一種)にも興味を持っている筆者は、3つのゴンドラを体験して「乗りもの」としての魅力を掘り下げてみることにしました。

国内での採用例が少ない「パルスゴンドラ」志賀高原リゾートゴンドラ

 訪ねたのは、山々に雲がかかり日差しが時折差し込むような日。都内では最高気温が35度、長野市では36度に達したほど暑い日でしたが、朝10時にスタート地点の「志賀高原山の駅リゾートセンター」に降り立つと、なんと気温は22度! 半袖では肌寒いくらいです。

 志賀高原ゴールデンラインのチケットを買うために、まずはリゾートセンター内のチケットカウンターに向かいます。チケットは志賀高原ゴールデンラインおよび「高天原(たかまがはら)ゴンドラリフト」を大人(中学生以上)3000円、小人(小学生)1800円で乗り放題の「志賀高原ゴールデンライン1dayパス」購入がオススメ。ネットでの事前購入なら、10%引きで買うことも可能です。

 志賀高原リゾートゴンドラは3つの搬器が1セットで連なる珍しいタイプで、「パルスゴンドラ」という構造に分類されます。

マジで“脈”みたいなパルスゴンドラの特殊性

 一般的なゴンドラまたはゴンドラリフトでは、搬器の「握索機」がロープ(支曳索)を握ることで、搬器がロープと一緒に移動します。搬器が停留所にやってくると、自動的に握索機がロープを離し、タイヤなどで構成された「押送装置」がゆっくりと搬器を前に押し出します。これにより空中を移動しているほかの搬器の速度を落とさずに、低速で動く搬器に乗降することができるのです。

 そして乗降が終わると再び握索機がロープを掴み、搬器は停留所から出発していきます。このシステムを「MGD(単線自動循環式)」といいます。

 一方のパルスゴンドラでは、搬器はロープに固定されているため、乗降時に速度を落とすと、空中の搬器もそれに合わせて減速もしくは停止します。システム全体が脈(パルス)のような動きをすることから、パルスゴンドラと称します。

 ちなみにパルスゴンドラは「MGFP(単線固定循環式)」と呼ばれています。複雑かつ大きい押送装置を設備する必要がないため、低コストで建設できるメリットがあります。しかし減速すると輸送力が減ってしまうため、同時に複数の搬器を連ねてそれを確保しています。日本ではニセコの「アッパービレッジゴンドラ」、草津温泉スキー場の「パルスゴンドラ天狗」などで採用例が見られます。

 索道にも施工メーカーがいくつかあり、志賀高原リゾートゴンドラの設計・製作・施工は、国内の索道設置基数シェア第1位の「日本ケーブル」が担当。搬器はスイスの「CWAコンストラクション」が製造する「OMEGA-III」で、外部に冬季用のスキー・スノーボード用ラックを備えます。

 なお志賀高原リゾートゴンドラは1つの施設に8人乗りの搬器を3連・4グループ有することから、「4×3×8-MGFP」と表記します。

 このゴンドラは「くだり」なので、いちばん奥の搬器に乗り込んで下方の景色を楽しむことにしました。距離402m・標高差150mほどの短い区間ですが、遠くにはこれから乗り継ぐ2つのゴンドラや、1998年の長野五輪で使用された大回転コースなどが見え、ゴールへの期待が視覚的に高まっていきます。

卵型のレトロゴンドラに乗りたい! ブナ平ゴンドラ

 志賀高原リゾートゴンドラを降り、数分歩くとブナ平ゴンドラの乗り場に到着。周囲には欧風の意匠が施された宿泊施設も点在しており、まるで海外にいるような雰囲気です。

 ブナ平ゴンドラはかつて「発哺(ほっぽ)クアッドリフト」という開放座席型の4人乗りリフトで運行されていましたが、2021年にゴンドラ搬器に交換されて現在に至ります。その際、東館山ゴンドラリフトで使用されていた搬器と、富山県の「立山山麓スキー場 らいちょうバレーエリア」のゴンドラリフト廃止で不要となった天龍工業製の搬器が転用されました。なおブナ平ゴンドラと次の東館山ゴンドラリフトは、日本有数の索道メーカー「安全索道」が製造や施工を行なっています。

 しかし乗り場で待っていると、たまに丸くてレトロな搬器がやってきます。この搬器はフランスのPOMA(ポマガルスキー)製で、なんと製造は1975(昭和50)年頃。以前は東館山ゴンドラリフトで使用されていました。同リフトが開業した1976(昭和51)年から活躍しており、独特の卵型の形状から志賀高原スキー場の象徴として長年親しまれてきました。じつは筆者のお目当てはズバリ、このレトロ搬器です。

 そこで乗り場の係員に「こちらの古い搬器に乗りたい」と申し出たところ、「これ(37号)は窓が曇っていて外が見えず、空気取り入れ口が小さくて暑いです。あとから来る41号なら、視界がよくて空気もよく入ってくるので、それを待ってください」と案内されました。

 降りてきた41号は、たしかにアクリル製の窓はクリアで視界も良く、上部の換気口も大きくなっています。レトロアイテムが大好きな筆者は、大喜びで41号に乗りこみました。4人乗りですが丸いボディのため中は狭く、大人4人で乗るのは実際には厳しそう。窓は一切開きませんが、流れてくる風だけでも内部は十分涼しかったです。

 ブナ平ゴンドラの高低差は239m。木々の中をぐんぐん登っていくと、終点「ブナ平ゴンドラ山頂駅」に到着します。ここからはまた数分歩いて、東館山ゴンドラリフトの乗り場「東館山ゴンドラ山麓駅」へ向かいます。途中に坂が厳しい区間がありますが、有難いことにゴルフカートでの無料送迎があるので、ぜひ利用しましょう。

下りたら「寒い!」 東館山ゴンドラ

 東館山ゴンドラ山麓駅は開業時の姿をよく保っており、昭和時代のリゾート気分を楽しめます。ゴンドラに乗り込み標高2000mを目指して登っていきますが、眼下には訪問時に見頃だったニッコウキスゲの群生が見られました。

 ところが山の天気は変わりやすく、山頂付近は霧の中。楽しみにしていた眺望は見られないかもしれません。

 ちなみに以前の東館山ゴンドラリフトでは前述のPOMA製卵型ゴンドラが用いられていましたが、2016〜17年頃に天龍工業製と思われる新製搬器を導入して半数を入れ替え、その後、さらにらいちょうバレーエリアで使用されていた搬器を搬入。そのため現在では、東館山ゴンドラリフトで卵型ゴンドラは使用されていません。

 高低差431mを登って東館山ゴンドラ山頂駅に着いたゴンドラを降りての感想は、「寒い!」でした。壁の温度計はなんと18.7度。思わずバックパックから上着を取り出しました。標高約2000mは伊達ではありません。

 山頂には、約10万平方メートルという広さを誇る日本最大級の高山植物園「東館山高山植物園」があり、志賀高原に自生する約500種類以上の高山植物を見ることができるので、まずは散策しました。すると霧が晴れて太陽が少し顔を出してきたので、駅舎に併設の「志賀高原ガーデンテラス」に向かうことに。

 完全に晴れていれば志賀高原と北アルプス、北信五山の大パノラマを望むことができるはずですが、すべての雲が消えることはありませんでした。しかし雄大な志賀高原の景色を満喫することができたので大いに満足です。

 なお東館山ゴンドラ山頂駅には、名物のチーズフォンデやサーロインステーキなどの「絶景グルメ」を楽しめる「THE ROOFTOP DINING」、ホットドッグやコーヒーなどを販売する「カフェスタンド アルピナ」も併設しています。筆者はカフェスタンドでアイスコーヒーを購入。天空の展望台で飲むコーヒーはまさに格別でした。

アクセスは「日本一高い国道」で

 このあとも抜群の眺望が自慢の「横手山ドライブイン」や、国道として日本で一番高い地点を走る標高2172mの「渋峠」などに足を運びましたが、いずれも気温は20度前後という涼しさでした。首都圏から少し遠いこともあって、観光シーズンでも人出は思ったより少なめだったのも推しポイントです。

 志賀高原へのアクセスは、マイカー・公共交通機関ともに、渋峠を通る国道292号の「志賀草津高原ルート」で向かうことになります。しかもこのルートは想像以上の絶景続き。ドライブコースとしても最高です。志賀草津高原ルートの起終点である群馬県草津町と長野県山ノ内町のあいだには、それぞれ草津温泉と湯田中・渋温泉郷を控えています。

 避暑だけでなく温泉も楽しめるオススメエリアですが、訪問の際には上着の携行を忘れずに!