熊本地震の被災者の中には、さまざまな事情から自宅や親戚宅で生活を続ける人がいる。避難所の被災者は名簿などで把握できる一方、在宅避難する人の数や生活状況を行政がつかむのは難しく、物資の配布や健康相談といった支援が届きにくいとされる。必要な支援にどうつなげるかが課題となっている。
震度7の揺れに襲われた宇城市。同市に住む女性(94)の自宅は被害が大きく、応急危険度判定で「立ち入り危険」と判断された。女性は親戚が所有する近所の空き家で長男と暮らすが、温水は出ず、台所で水を使うと流し台の下から水漏れする環境での生活を余儀なくされている。
女性は足腰が悪い上、耳が聞こえづらい。補聴器を使ってはいるが、家族らが大声を出さなければ声が届かないため、約200メートル先にある避難所での集団生活は難しい。近くに住む長女(70)は「今の状況で避難所に行くのは厳しい選択だ」と表情を曇らせる。
同市で妻と暮らす福岡一男さん(76)は、日中は飼い猫3匹の世話や自宅の片付けをし、夜は避難所で過ごしている。築70年以上の木造平屋建ての自宅はトイレや風呂が壊れ、使えない。家の中は家財道具が散乱し、土足でなければ歩けない状態だ。
当初は自宅や敷地内に止めた車で寝泊まりしていたが、地震発生から約2週間後、周囲の住民の勧めで夜間のみ避難所に滞在するようになった。「動物がおる。連れて行けない場所がある」と話し、当面は今の暮らしを続けるつもりだ。
熊本県によると、18日午前8時現在、避難所に身を寄せる避難者数は3050人に上る。他に在宅避難や車中泊をしている人も少なくないとみられるが、全体像や現状は把握できていない。
県などは、高齢者や障害者ら要配慮者を支援するため、福祉の専門職でつくる「災害派遣福祉チーム(DWAT)」を在宅避難者宅などに派遣。16日までに延べ約750人が活動しており、生活状況の聞き取りや支援物資の配布、福祉避難所への誘導などの支援に当たっている。
〔写真説明〕地震の被害を受けた自宅を片付ける福岡一男さん=13日、熊本県宇城市