防衛省がこのたび最新の防衛白書を公表しました。そこには、軍事力の強化を急速に進める中国の姿が浮き彫りになっています。すでに自衛隊を凌駕する戦力をそろえた中国軍ですが、日中間でどれほどの差がついているのでしょうか。
「新しい戦い方をめぐる動向」を新規項目として追加
防衛省は2026年8月4日、最新の防衛白書(令和8年版)を公表しました。
防衛白書は毎年発刊されていますが、今回のものは、安全保障関連三文書改定の前倒し改定を行う節目の年の白書として、ロシア・ウクライナ戦争以降の無人航空機(ドローン)や人工知能(AI)を使った「新しい戦い方をめぐる動向」を新規項目として追加したことが特徴となっています。
また、わが国を取り巻く安全保障環境に関しては、国際社会が新たな危機の時代に突入し、インド太平洋地域の安全保障も厳しさを増しているとの認識を示したうえで、中国の軍事動向について「わが国と国際社会の深刻な懸念事項であり、これまでにない最大の戦略的な挑戦」と指摘。同国が、核・ミサイル戦力や海上・航空戦力を中心に軍事力の質・量を広範かつ急速に強化していることを明記しています。
では、具体的な数字はどうなっているのか、防衛白書を読み解いてみました。
海軍戦力は2倍以上
「専守防衛」を国是とする島国の日本にとって、周辺諸国の海上・航空戦力は直接の脅威となります。
なかでも経済成長を背景に増強が著しい中国海軍は、東シナ海や南シナ海にとどまらず、太平洋や日本海にも進出するようになっています。最近では7月16日から8月3日にかけてミサイル駆逐艦2隻と補給艦1隻が太平洋から宗谷海峡を経て日本海に入り、対馬海峡から東シナ海に抜けるかたちで、日本列島を周回しました。
このように活動を活発化する中国海軍ですが、防衛白書には、空母をはじめとする主な海上戦力に関する記載があります。そのうち、保有する近代的駆逐艦・フリゲートの数は、レンハイ(南昌)級、ルフ(旅滬)級、ルーハイ(旅海)級、ソノブレメンヌイ級、ルーヤンIII(昆明)級、ルージョウ(瀋陽)級などの駆逐艦と、ジャンウェイ(江衛)級、ジャンカイ(江凱)級のフリゲートを合わせた104隻です。
対して、海上自衛隊の護衛艦の数は2026年3月末時点で52隻ですから、単純比較で2倍の開きがあると言えるでしょう。これに中国が50隻保有しているジャンダオ(江島)級小型フリゲート(コルベット)を加えると、その差は3倍にまで広がります。
また近代的な潜水艦では、中国海軍がジン(晋)級、シャン(商)級、ソン(宋)級、ユアン(元)級、そしてロシアから輸入したキロ級の各潜水艦を計58隻保有するのに対し、海上自衛隊の潜水艦の数は22隻(今年3月末日時点)で、こちらも3倍ほどの開きがあります。しかも、ジン級とシャン級は原子力潜水艦です。
こうした海軍戦力の差だけでなく、尖閣諸島周辺海域で中国海警局と対峙する海上保安庁もまた、保有船舶の数で引き離されています。2025年度末の時点で海上保安庁巡視船1000トン型(総トン数)以上の数が81隻であるのに対し、中国海警局所属船舶で1000トン級(満載排水量)以上は昨年12月末の時点で175隻とされています。
圧倒的な差がある航空戦力
それでは、航空戦力の差はどうでしょうか。中国は、ロシアから輸入したSu-27/Su-30/Su-35、これらをもとに国内生産したJ-11B/J-16、さらに中国独自開発のJ-10などの第4世代戦闘機とステルス性を有する第5世代戦闘機J-20およびJ-35を保有していますが、防衛白書は、両世代合わせた戦闘機の保有数について1838機と記載しています。
一方、日本が保有する第4世代と第5世代戦闘機はF-15、F-2、F-35A/Bを合わせて344機(今年3月末日時点)と、航空戦力は6倍近い開きがあります。
さらに、中国は戦闘機だけでなく、巡航ミサイルを搭載するH-6爆撃機を保有し、ステルス爆撃機の開発を進めています。また、「新しい戦い方」を象徴する無人航空機についても、すでにミサイルなどを搭載する攻撃型を開発し、日本周辺での飛行も確認されています。
これに対し、自衛隊が現在保有している長距離飛行可能な無人機は偵察用のRQ-4B「グローバルホーク」3機のみですから、無人機まで含めると日中間の航空戦力の差は今後ますます広がることは避けられません。
もちろん、日本は日米安全保障条約(安保条約)にもとづきアメリカ軍と連携することから、在日米軍を加えない海上戦力と航空戦力の比較では不十分と言えるかもしれません。しかし、第二期トランプ政権によるイランへの軍事攻撃とその後の弾薬枯渇などを見る限り、果たして日米防衛協力が有効に機能するのか、疑念が生じます。
このように防衛白書は、日本が海上・航空戦力でも中国に引き離されつつある現実を示しています。これを踏まえ、年末に改定される安保三文書がどのような方向を示すのか、見守りたいと思います。