金価格160倍、再び脚光=中銀積み増し、揺らぐドル一極―「ニクソン・ショック」55年

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 【北京時事】1971年8月、当時のニクソン米大統領が基軸通貨ドルと金の交換停止を電撃発表してから15日で55年となった。米国は金の足かせを外してドル覇権を築く一方、決済網への影響力を武器に金融制裁を相次いで発動。近年はドル一極集中に対する警戒感が高まり、中国を筆頭に多くの国が安全資産である金を買い進めている。再び脚光を浴びた金の価格は今年1月に史上最高値を記録。当時から約160倍に跳ね上がった。
 米ドル支配に「見えない衰退」―。ロシアのウクライナ侵攻から1カ月後の2022年3月、国際通貨基金(IMF)の専門家は、ドルの存在感が静かに薄れていくと警告した。その指摘は現実となり、世界の外貨準備に占めるドル建て資産の比率は昨年、過去最低の56%台まで落ち込んだ。
 背景には、世界の中央銀行の「金回帰」がある。08年のリーマン・ショックで中銀の多くが金売却から購入へ転換。ウクライナ危機では、米欧によるロシア中銀の資産凍結がドルを介した制裁リスクを世界に刻んだ。さらに25年の第2次トランプ政権発足後は、米財政悪化や関税不安がドル離れに拍車を掛けている。
 世界の中銀を含む公的機関の金保有量は今や約3万6000トンと、ニクソン・ショック直前の水準に迫る。金相場は今年1月、当時の公定価格1トロイオンス=35ドルの約160倍に当たる5590ドル台まで急騰した。インフレ懸念に加え、足元では中東情勢の緊迫も「有事の金」買いを誘っている。
 米中対立をにらみ、買い入れを主導するのが中国だ。ウクライナ侵攻後の購入量は世界最多で、国別保有量ではロシアを抜いて5位に浮上した。一方、米国債保有額は日本、英国に次ぐ3位に後退。ポーランドのほか、インド、ブラジルなどグローバルサウス(新興・途上国)も金への分散を進めている。
 中国の矛先は米ドル支配に向かう。習近平国家主席は人民元を「世界的な準備通貨」にする方針を掲げている。金回帰の流れを追い風に、世界最大級の金生産・消費大国の強みを香港の国際金融機能と結び付け、7月には決済システムの試験運用を始めた。欧米主導の金取引を呼び込み、人民元経済圏を広げる構えだ。
 「金は『脱ドル化』の最大の勝者だ」。元中国国家外貨管理局国際収支司長の管濤氏は、金の復権が国際通貨秩序に「第三の道」を開いたとみる。欧州中央銀行(ECB)によると、中銀の準備資産に占める金の比率は昨年末時点で27%となり、ドル資産の中核である米国債の22%を逆転した。55年前、米国は金を自ら切り離してドル覇権を握った。その金を今、中国がドル一極に挑む足場に変えようとしている。 
〔写真説明〕ニクソン米大統領(AFP時事)