主要国の対立による機能不全が続く世界貿易機関(WTO)が、現状打開へ改革の実質議論を始めた。ルール形成を巡る議論のこう着を招いている166の加盟国・地域の全会一致による意思決定の見直しなど、4分野が主要議題。日本も各分野への提案に加え、意思決定の議論で合意形成への調整役を担う「ファシリテーター」を送り出すなど積極関与する。
WTOは、一般理事会で改革の議論を(1)意思決定(2)公平な競争条件(3)開発(4)基本的事項―に大別。それぞれにファシリテーターを置き、7月下旬からは各分野で具体的な議論を始めた。3月の閣僚会議で改革の作業計画の策定に至らず、2028年の次回閣僚会議をにらんで具体策の議論を加速する。
意思決定改革で焦点の一つとなっているのが、特定の分野で貿易ルールを整備する複数国間(プルリ)協定を、WTOの制度に組み込むための方策だ。今年3月にはデジタル貿易の共通ルールを定めた協定について、制度化に必要な全加盟国・地域の同意を得られず、日本を含む70近い国・地域が暫定措置として採択した。
こうした新たな課題に迅速に対応するため、日本はプルリ協定について、全加盟国の3分の1以上の参加などを条件に、反対国は損害の説明義務を負い、説明への反対が過半数を占めれば妨害できないようにすることを提案している。
日本は、非市場的な政策・慣行への対策を検討する公平な競争条件を巡る改革も重視。先進国の多くが、過剰生産で自国産業が衰退させられているとして中国を警戒しており、制限や監視を強めることを求めている。日本は、再建困難な「ゾンビ企業」への補助金の拠出を禁じる案を示した。
ただ改革提案には、途上国などが発言力低下や産業政策の余地を狭めることに懸念を示している。WTO復権には、先進国と途上国、工業国と農業国などが立場を超えて納得できる全体像を示せるかがカギとなる。