「戦争は一番不幸。作品をきっかけに戦争を知ってもらえれば」。戦後81年が経過しようとする中、体験のない世代が9割近くとなった。太平洋戦争でのペリリュー島の戦いを描いた漫画「ペリリュー ―楽園のゲルニカ―」の作家武田一義さん(50)は、過去を繰り返さないため、「知ることが大切だ」と語る。
戦後70年の2015年、ムック本の企画で初めて戦争を題材に読み切りを描いた。監修した戦史研究家がペリリュー島に詳しく、話を聞くうち、「日本兵が自分で考え生き残る姿が人間くさく、自分と変わらないと感じた。漫画に描きたくなった」と振り返る。
読み切りを連載化した「ペリリュー」は自身で提案。漫画家志望の田丸1等兵を主人公に、史実に沿って1944年の日米の戦闘から、終戦後の47年まで続いた日本兵の潜伏、孫世代までを描いた。残酷な場面は不可避だったが、人物を3頭身でかわいらしく描写し、幅広い層の読者に受け入れられるよう努めた。全15巻に上り、10年かけて取り組んだ。
武田さんは「いったん戦争が始まってしまうと、いかに終わるのが難しいかが物語の骨。出口がなくなる」と話す。
同島で潜伏した生還兵はわずか34人。土田喜代一さん=18年、98歳で死去=には6回ほど会い、話を聞いた。普段はユーモアを交えながら語る土田さんが、戦友の死に話が及ぶと、大泣きした姿が目に焼き付いている。
別の生還者からは玄関先で「漫画は軽いと思う」と断られた。武田さんは「漫画として人気を得ることと、戦争という題材に誠実であることの両立は難しい。重みを失わないため、戒めのような言葉だ」と受け止めた。
土田さんら2人は連載中に死去し、「思いに背くような作品にはできない」と痛感した。
元日本兵の子や孫から「気持ちや体験を理解できた気がした」との感想が寄せられ、小学生ら若い世代からも「こんなことがあったなんて知らなかった」と反響を得た。「若い人や、漫画でないと戦争に触れる機会がない人に届いてうれしかった」と笑顔を見せる。
「戦争を体験していない世代は、まず知ることが大切。作品を入り口に、調べたり勉強したりしてほしい。戦争はどう考えたって一番不幸だ」と話す武田さん。自身の闘病を扱ったデビュー作から一貫し、作品の根底には「日常と生死」がある。次作は沖縄戦を題材に構想している。
〔写真説明〕取材に応じる漫画「ペリリュー」作者の武田一義さん=7月1日、埼玉県所沢市
〔写真説明〕漫画「ペリリュー」作家の武田一義さん(右)とペリリュー島からの生還兵だった故土田喜代一さん=2018年、福岡県筑後市(武田さん提供)