高市早苗首相が3日に行った熊本地震の被災地視察の様子を首相官邸が約2分に編集して公開した動画が物議を醸している。ピアノ調の音楽を付けた演出に「首相のプロモーションビデオ(PV)だ」との批判が殺到。首相は先の国会で自身の陣営による中傷動画疑惑で批判を浴びており、動画を巡る問題が再び浮上した格好だ。
動画は視察当日の夜、官邸の公式アカウントでX(旧ツイッター)などに投稿された。首相を中心にさまざまなアングルから撮影され、ヘリコプターで上空から視察する場面などを収録。被災者と握手する映像がスローモーション加工され、被災者から首相に向けた「全部が全部ありがたかったです」との言葉で締めくくられている。
SNS分析ツール「ブランドウォッチ」で官邸のX投稿への返信やリポストを分析したところ、6日までの総投稿数は約1万4900件。「政権の支持率回復の宣伝にしか見えない」「被災地の政治利用」といった批判的な投稿が目立った。「被災者は心強く感じるのではないか」など好意的なコメントもあった。
野党からも批判が出ている。立憲民主党の蓮舫参院議員はXで「首相と官邸は論外だ」と非難。共産党の山添拓政策委員長も官邸の対応に「あぜんとする」と断じた。
ネット上で議論となる中、木原稔官房長官は5日の記者会見で「首相の被災地視察の状況をコンパクトにまとめた動画はこれまでも行っている」と強調。音楽を付けた演出については「視察した際の様子を国民に分かりやすく伝えるための手法の一つだ」と理解を求めた。
広告やマーケティングを専門とする桜美林大の西山守・准教授は「演出や自己アピールが強過ぎて実際、動画は炎上している。『やっている感』をアピールし過ぎることによって逆効果になっている」と指摘。「BGMを入れる必要もない。首相が主役になっており、動画の作りとして非常に良くなかった」と語った。
〔写真説明〕熊本地震の非常災害対策本部会議で発言する高市早苗首相=7日午後、首相官邸