海上自衛隊のイージス艦「ちょうかい」が、太平洋上で巡航ミサイル「トマホーク」の初となる実射試験に成功しました。防衛省は今後「トマホーク」を400発導入する計画ですが、その一方で本命は別にあるようです。
海自イージス艦が初の「トマホーク」実射試験に成功!
海上自衛隊の護衛艦「ちょうかい」は、2026年7月29日(日本時間)に太平洋上で巡航ミサイル「トマホーク」の実射試験を行いました。防衛省によると、乗員の練度を含め、実際に発射できることを確認できたといいます。
「ちょうかい」は、巡航ミサイル「トマホーク」の発射能力を獲得するため、2025年9月下旬から約1年間の予定で、アメリカに派遣されました。そして、同海軍の支援を得て、「トマホーク」発射機能の付加に必要な改修と乗員への訓練を行い、このたびの実射試験に臨んでいます。
この試験は、最大射程約1600kmある「トマホーク」の発射から命中するまでの一連の様子を確認するのが目的ですが、アメリカ側の意向から、試験の詳細については未公表となっています。
今回の実射試験によって、海上自衛隊のイージス艦として初めてトマホーク発射能力を備えることが確認された「ちょうかい」は、今年9月頃に定係港である佐世保基地に帰投する予定です。
防衛省と自衛隊は、わが国への侵攻部隊を早期・遠方で阻止・排除するため、スタンド・オフ防衛能力の強化を進めており、2024年1月、アメリカ海軍省との間でトマホーク400発の購入契約を締結。これに基づき、2025年度からトマホークの引き渡しが始まりました。
防衛省では、最終的には2025年度から2027年度にかけてブロックIV型を最大200発、2026年度と2027年度にブロックV型を最大200発、合計で最大400発取得する計画です。
そして、この「トマホーク」の搭載艦艇に選ばれたのが海上自衛隊のイージス艦です。
海上自衛隊のトマホーク搭載艦は計10隻
防衛省では、海上自衛隊が保有するイージス艦8隻すべてに「トマホーク」の発射機能を付加することを計画しており、そのための経費として2026年度予算までに約1136億円を計上しています。
「ちょうかい」を除き、改修が決まっているのは「きりしま」「はぐろ」「みょうこう」「あたご」で、この4艦は定期検査に合わせて「トマホーク」の発射機能が付加されます。なお、すでに「きりしま」「はぐろ」の改修工事は2025年度から始まっており、「みょうこう」と「あたご」は2026年度に工事を開始する予定です。
また残る3隻、すなわち「こんごう」「あしがら」「まや」の改修経費については、2027年度以降、予算要求することになっています。
ちなみに、今後改修を終えるイージス艦には、「ちょうかい」のような「トマホーク」の実射を試験する計画は、今のところありません。
ところで、海上自衛隊の護衛艦で「トマホーク」を搭載するのは、イージス艦8隻だけでなく、将来的には現在建造中のイージスシステム搭載艦(ASEV)2隻も加わります。
「トマホーク」の購入数が最大400発なので、単純計算で1隻あたり40発となり、これだけでは長期戦となった場合、十分な数とは思えません。しかし、防衛省の担当者は現在のところ、「トマホーク」を追加購入する計画はないと説明しています。
「トマホーク」はあくまで本命までの“つなぎ”?
実は、防衛省・自衛隊は、スタンド・オフ防衛能力を強化するにあたり、国産のスタンド・オフ・ミサイルを早期取得する構想も立てています。そのため、「トマホーク」は国産スタンド・オフ・ミサイルの補完という位置付けです。それでは、国産スタンド・オフ・ミサイルのうち艦船搭載用の現状はどうなっているのでしょうか。
最初に搭載されるのが、「25式地対艦誘導弾(旧称:12式地対艦誘導弾能力向上型)」の艦発型で、2027年度に護衛艦「てるづき」で運用を開始します。この25式地対艦誘導弾は射程約900~1500kmで、イージス艦以外の護衛艦に広く搭載される計画です。
ただし、「トマホーク」が対地・対艦攻撃兼用なのに対し、25式地対艦誘導弾はその名の通り対艦攻撃用なので、現状では艦船搭載型で対地攻撃に使える国産スタンド・オフ・ミサイルは存在せず、「トマホーク」に頼らざるを得ません。
こうした状況を打開するものと見られているのが、防衛装備庁で2024年度から2032年度までのスケジュールで開発が進められている「新地対艦・地対地精密誘導弾」です。
2025年3月に最初の開発契約が三菱重工業と結ばれた同ミサイルは、その名のとおり、島嶼部と周辺海域に対する対艦および対地攻撃を想定し、長射程かつ高い精密誘導性能を特長としています。
現時点では陸上自衛隊向けのみですが、12式地対艦誘導弾能力向上型の前例が示すように、いずれ「艦発型」や「空発型」が開発される可能性も考えられます。
いずれにせよ、艦船から対地攻撃に使える国産スタンド・オフ・ミサイルが登場し広く行きわたるまでの間、400発の「トマホーク」が担う役割は極めて大きいと言えるでしょう。