「Tシャツが乾くまで」高橋文哉、セリフに込められた表と裏の意味 物語の鍵は“誰の主観で見るか”

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女優の蒼井優が主演を務める、TBS系7月期金曜ドラマ「Tシャツが乾くまで」(毎週金曜よる10時~)。第4話を前に俳優の高橋文哉にインタビューを実施し、撮影現場の雰囲気、今後の見どころなどを聞いた。

◆蒼井優主演「Tシャツが乾くまで」

本作は、脚本家・生方美久による完全オリジナルストーリー。とある事故がきっかけで、当たり前に続いていくと思っていた幸せな日常が、突如崩れ去ってしまった2組の夫婦の喪失から始まる“愛”と“秘密”を描く。

高橋は、主人公・瀬尾咲子(蒼井優)の夫・充(松山ケンイチ)がオーナーを務める喫茶店「ひこうき」の従業員・矢野直人役。直人は、バス事故で行方不明になった充の代わりに店を切り盛りする一見社交性がある青年だが、実はドライな性格の持ち主だ。第3話では、直人が咲子を心配しながらも、充と連絡を取っていたことが明らかになった。「ひこうき」の店内で、直人が咲子、園田樹生(中島歩)ら登場人物たちと2人きりで繰り広げる会話は、この物語の行方を解き明かすヒントになりそうだ。(modelpress編集部)

◆高橋文哉インタビュー

― 第2話では充が行方不明になるきっかけとなったバス事故で妻を失った樹生と言い合うなど、物語が進むにつれ、ドライな直人の意外な一面が見えてきました。改めて直人はどのような人物ですか。

高橋:僕が今まで演じたことがないような人物です。他人と一定の距離を置いている、いわゆる少し体温の低いロートーンですが、その瞬間に思ったこと、言いたいことをパッと口にしてしまうところがあるので、自分の感情にすごく正直なのだと思います。自分の中での怒りの沸点が分かっていないので、言ってしまったことに対して「何が正解だったんだろう」と向き合いながら、人との関係に線引きをしてきたんだと感じています。だから、咲子から見た直人、樹生から見た直人、充から見た直人は全て違う印象に見えているはず。それは直人がいろいろな顔を演じ分けているのではなく、相手によって自分を出す幅を決めているからだと思います。

― 感情が表に出てしまうところに直人の不器用さを感じます。

高橋:素直ですよね。僕は、直人は不器用というより、“自己嫌悪が強い人物”なのかなと捉えています。周りからは「直人くんって意外とちゃんとしているよね」と言われるタイプだけど、直人自身は「俺のどこがちゃんとしているんだろう」と思っている、みたいな。“他者から見た直人”と、“直人自身が見ている自分”の評価にギャップがあると感じているところを大事にしながら演じています。

― さまざまな人物と2人きりで話すシーンが多い印象ですが、演じる上で心がけていることはありますか?

高橋:誰とのシーンでも「直人はこの人のことをどう思っているんだろう」と考えます。台本にもいろいろ書き込んでいます。例えば樹生とのシーンでは、まず“嫌い”と簡単な感情を書きます。それから「何で嫌いなんだろう」と派生させていき、突き詰めていったことを書き込んでいます。そんなふうに考えていくのがすごく楽しいです。実は、周囲の人が隠している部分を知っているけれど、知らないふりをしたり、少しだけ知っている体(てい)で話をしたり。相手に悟られないようにしてはいるものの、それが顔に出てしまうので、会話をしていても相手の目を見られなくなってしまうんです。作品を見ている方にはそんな直人の表情が“引っかかり”になってくれたらいいなと思っています。

― 主演の蒼井優さんをはじめ、先輩たちとの共演はいかがですか?

高橋:直人から見る咲子さんは、この作品的に言えば“フィルターがかかっている”と僕は思っているのですが、そのフィルターがたぶん僕の中にもあるんです。それもあってか、撮影現場ではいつも蒼井さんを目で追ってしまいます。常々目にするのが、「頑張ろう!」と、明るく現場の士気を上げてくださる姿です。作品の宣伝を兼ねて出演した番組でゲームをした際、共演者の中で誰よりも本気で挑んでいた姿は意外でした。とても真っすぐで、素敵な方だと思いました。

中島さんは、とてもストイック。ご自身が監督と意見交換しているときに、「樹生から直人を見るとこう見えるんだけど、直人はどう見えている?」と僕にも聞いてくださるんです。僕がそこにいたから気を遣って、ではなく自然に声をかけてくださるので僕もお話できますし、意見交換をしっかりさせていただけるいい撮影現場だなと思いました。あと、お互い凝り性で、中島さんは得意分野の話になると、1つ聞いたら130個くらい答えが返ってくるんです。しかも僕の話もしっかり聞いてくださって、ちゃんと受け入れてくださる。すごく素敵な先輩です。

松山さんは、ご本人自体にとてもキャラクター性がある方。そこから芝居をするとなった途端、いろいろな役柄に瞬時に切り替わる様がとにかくすごいなと思います。(作品の宣伝で)他番組でご一緒させていただいた際、「面白くしたいな、どうしようかな」と小さな声でおっしゃっていたのが印象的でした。瞬発力と突発的な爆発力がある方なので、見習っていきたいです。

― 生方さんの脚本を読んで感じたことを教えてください。

高橋:生方さんの作品はこれまでも拝見していたのですが、今回演じてみて、ひとつひとつのセリフが「(該当する)そのシーンのみ」「前後合わせた3つのシーン」「1話全体」と見方を変えることで、持つ意味が変わってくる印象を受けました。僕としては、セリフの表と裏の意味を見つけ、直人として今は表であるべきか、裏であるべきかを相手との関係性を整理しながら演じるようにしています。また、直人は毎話たくさんのシーンに出ているわけではなく、大事な場面で登場するキャラクターだと捉えています。生方さんが、作品の中で“温度を変えるグラデーションの分かれ目”として直人を置いてくださっているなと感じています。

― 最後に作品の魅力、今後の見どころについて教えてください。

高橋:このドラマは“誰の主観で見るか”が鍵なのではないかと思います。僕は直人以外の主観では見られませんし、見ていないからこそ、僕には見えない世界を視聴者の皆さんには見ていただけるはずです。自分が感情移入できるキャラクターや自分に近い立場のキャラクターがいたら、そこにアジャスト(順応)して見るのも素敵だと思います。直人としては、今後他の登場人物とどのように関わっていくのかを楽しみにしていただきたいです。低体温の部分が欠けてきて、直人の本質がペロッとめくれるような瞬間を見ていただけたらうれしいです。

現在、無料動画配信サービス「TVer」では、高橋演じる直人が主役の『「Tシャツが乾くまで」 サイドストーリー』が配信中。喫茶店「ひこうき」を舞台に、本編の裏側で行われていた“秘密のひととき”が描かれる。「ものすごく気合が入っています!」と熱い言葉を残してくれた高橋。本編と合わせて見ることで、直人の人となりがさらに分かるはずだ。物語はまだ序盤。今後、登場人物それぞれの秘密が明かされていくことで「誰を主観で見るか」が変わってくるかもしれない。最後に誰に感情移入できるか。