近鉄南大阪線の特急で現役最古参として走る16000系電車は、引退が進んでおり、2026年現在は2両編成1本だけが残っています。
約60年前に登場した近鉄16000系
近鉄は、2026年6月に南大阪線で新型一般車両の6A系を使用した有料着席サービス「すわれ~る」を導入しました。これは座席をクロスシートにして着席サービスを行うものですが、一方で南大阪線では特急車両を使用した特急列車も運行されています。南大阪線の特急車両で現役最古参として活躍するのが16000系電車です。引退が進んでおり、2026年現在は2両編成1本だけが残っています。
16000系は南大阪線系統の特急車両です。大阪阿部野橋から桜の名所・吉野方面に向かう特急に使用されています。1965(昭和40)年に南大阪線系統で特急列車の本格的な運行を開始した際に導入され、令和の現在も使用されています。
……と言っても、現在残っている16000系は1977(昭和52)年に増備された最後の2両です。運行開始当初の車両は近鉄線から引退しています。
近鉄は大阪から名古屋までの広い地域に路線網があり、現在の近鉄線の路線網が出来上がるまでに20社近くの会社が関わっています。近鉄の線路幅は、標準軌と呼ばれる1435mmを採用している路線が多く、これは新幹線と同じ線路幅でもあります。一方、大阪阿部野橋から吉野方面に向かう南大阪線の系統は、路線網の成り立ちの都合で、他の近鉄線と幅が異なります。1067mmで、JRの在来線と同じ線路幅を採用しています。
このため、南大阪線系統では他の近鉄線と異なる車両が使用されています。16000系も南大阪線の事情に合わせて造られました。外観は、当時の近鉄特急で使用されていたものから変わり、車体の幅を狭くして当時の南大阪線の規格に合わせています。また、荷棚に多くの荷物が載せられるように屋根側の体積を増やした一方、屋根の高さは抑えているため、屋根の丸みを抑えた平たい印象になりました。
16000系は南大阪線の特急の増強に合わせて増備され、1977(昭和52)年までに2両編成8本と4両編成1本の合計20両が製造されています。増備過程でも細かな違いがありますが、現存する16000系の第9編成は車体色や特急表示が変更されました。後に他の編成も第9編成と同じ外観に揃えられています。
16000系の塗装の違い
現在の近鉄特急は、様々な車体色がありますが、16000系などの汎用特急は、クリスタルホワイトにブライトイエローやゴールドのラインを組み合わせた塗装が採用されています。この塗装は、2016(平成28)年に始まった車体色の変更で採用されたものです。
それまでは、オレンジとブルー(紺色)のツートンカラーが長らく採用されていました。このツートンカラーは16000系も採用され、前面には「特急」と標記された逆三角形のマークが添えられていました。第9編成は四角い特急マークとなり、車体色は特急マークを囲う形でブルーの部分の面積が拡大されていました。
新幹線をはじめとした特急車両は、車両の出入口と座席が並ぶ客室の部分が分離され、壁で仕切られているのが一般的です。出入口の部分は「デッキ」と呼ばれ、「携帯電話をご使用の際は、デッキでお願いします」などと案内されることもあります。
しかし、16000系をはじめとした昔の近鉄特急にはデッキがなく、扉が開いた状態だと客室が丸見えでした。しかし、この構造は車両のリニューアルや車両の淘汰でなくなっています。16000系は、第7編成以降の車体更新(リニューアル)で客室を縮小してデッキを設けています。
また、車体更新に際して内装が変わりました。座席は当初オレンジ色でしたが、リニューアルに際してカクテルレッド風の色に改められています。
後継車両の登場や特急運行の縮小により、16000系は1997(平成9)年から廃車が進められています。近鉄線内では2両編成1本だけとなりましたが、静岡の大井川鐵道に譲渡された車両は昔の近鉄特急の姿のままで使用されています。
今後、近鉄南大阪線の特急列車や「すわれ~る」の本数次第では、16000系の存在が危ぶまれるのかもしれません。