「トイレまで“使える”だと…?」伝説の豪華車両がレストランに転生 空間と味の「再現度」にまさかの涙

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2026年5月、東京都清瀬市の清瀬中央公園で、かつてJRの寝台特急「北斗星」などに連結されたこともあった豪華車両「夢空間」を活用したレストランが開業しました。

豪華客車がレストランに

 東京都清瀬市の清瀬中央公園で2026年5月、豪華客車「夢空間」を活用したレストラン「清瀬『夢空間』」が開業しました。

「夢空間」は、JR東日本が1989(平成元)年に製造した、「近未来の寝台列車」をコンセプトとした超豪華車両です。寝台車・ラウンジカー・食堂車の3両で構成されており、豪華寝台特急「北斗星」の臨時版「夢空間北斗星」の目玉として人気を集めました。

 寝台車の「デラックス・スリーパー」は、「オールドニュー」をテーマとし、高島屋が内装を手掛けました。定員は6人。「寝台車のインペリアルスイート」としてバスタブ付きの個室を備えていました。

 ラウンジカーの「クリスタルラウンジ・スプレモ」は、「知的遊空間」をテーマとし、デパートの松屋が内装を手掛けました。車内はアール・ヌーボー風の豪華空間に。食事前のアペリティーフや食後の余韻を楽しむ社交場としてデザインされ、日本の鉄道車両としては類を見ない飾り窓を備え、豪華客船のようなバーカウンターや自動演奏ピアノも備えていました。外観は、登場の前年に日本にやって来たオリエント急行のような気品のあるデザインでした。

 ダイニングカー(食堂車)は、パリのビストロをイメージし、東急百貨店が内装を手掛けました。展望を存分に楽しんでもらうために、側窓は高さ1170mm、幅1800mmの超大型。そして編成端に連結されるため、後方展望も楽しめました。

「夢空間」の3両は2008(平成20)年の引退までに、臨時列車として時には山陰や九州まで足を延ばしました。引退後は、寝台車が東京・木場のフレンチレストラン「アタゴール」の離れに。ラウンジカーと食堂車は商業施設「ららぽーと新三郷」(埼玉県三郷市)で保存されていましたが、ほぼ活用されないまま荒廃が始まっていました。そのような中で、清瀬市が清瀬中央公園の文化的な中心地としてラウンジカーと食堂車を修復・活用する方針を決め、「オリジナルへの完全な復元」を掲げて、クラウドファンディングも行いました。

 そのレストランが、2026年5月2日に営業開始し、同月に訪れました。清瀬中央公園は西武池袋線の清瀬駅から徒歩15分ほどです。

「ガチ復刻」を体験

 清瀬中央公園の「夢空間」2両は、新車のように輝いていました。後でスタッフに伺ったところ、「客車としての機能は全て復元した」とのことで、冷房も多くの保存車両のような家庭用クーラーの後付けではなく、車両の冷房を使用しています。ラウンジカー、食堂車の水回りも直接水道を接続しているそうですが、外から見ても配管が見えないよう、美しく配置されています。

 レストラン「清瀬『夢空間』」の営業時間は、11時から21時30分まで。食堂車ではランチとディナーのコース料理が、ラウンジカーではスイーツとお茶が提供されます。かつて大阪の交通科学博物館で、ナシ20形食堂車などが厨房を使って営業を行った事例はありますが、「現役時代の完全再現」に挑んだ事例はありません。

 食器もナルミと交渉して、廃盤となっていた現役時代のものを復刻。ラウンジカーと食堂車のじゅうたんも、元の柄を調査して復元し、「現役時代の夢空間」という食堂車文化を徹底的に再現したものです。

 筆者(安藤昌季:乗りものライター)は、ライフワークとして全国の保存車両を座席鉄の視点で巡っていますが、ここまで完璧な保存・再現は一つもないと感じます(「動く」という意味で、小坂鉄道レールパークの寝台車のみが匹敵すると思います)。

 5月8日時点ではオープニング体制とのことで、食堂車は全て予約制。ラウンジカーでは予約なしでスイーツが提供されています。スイーツのサイドメニューには清瀬市の名産が提供されており、市のアピールにも寄与しています。

おそらく日本一の「ガチ保存車両」

 ラウンジカーで特に感心したのは、トイレです。装飾は完璧に復元されつつも、機能は令和に進化しています。そして、トイレとして実際に使用できることは、とてつもないことだと感じます。スタッフに話を伺うと「現時点では寝台列車の文化を継承し、オリジナルを尊重していますが、古い車両で部品もないため、どれだけそれを継続できるかは分かりません。だからこそ、多くの人に利用していただきたいですね」とのことでした。

 ヘッドマークの電灯がやや明るさに揺れがあることを見て、維持の苦労が感じられて、心配となりました。

 食堂車では復刻ビーフカレーを予約しました。器やレシピも含めて、かつての寝台特急「北斗星」のものが再現されたものです。懐かしい味に、正直涙が出てしまいました。

 ディナーの「夢空間」復刻スペシャルコースも、当時のシェフの方に確認もして、完全に再現したものとのことです。筆者は「北斗星」「カシオペア」でコース料理を食べたことがありますが、「夢空間」で食事したことはイベント時だけ。スペシャルコースは初めてですが、十分満足できるクオリティ。なによりJR東日本の寝台特急の味を強く感じました。食事をしていてすばらしかったのが、展望食堂車の大きな窓から、時折「ラビュー」などの鉄道車両が見えることです。

 なお「復刻スペシャルコース」は反響の大きさから、夏頃まで提供するとのことでした。なお、今後は食堂車のコース料理は昼間時間帯も提供するとのことです。

 おそらく日本一の“ガチ保存車両”であり、文化として多くの人が愛した寝台特急を最高にリスペクトした保存設備だと思います。税金の使い道としての議論もなされているようですが、文化を守る意味を徹底したことで、心より感動したことは確かです。

 継続できるなら、きっと寝台特急食堂車を体験したことがない世代でも、そのすばらしさが伝わるのではないか。そう思うほど徹底した再現でした。