中国、覇権主義強める=比は「法の支配」訴え―南シナ海判決10年

インフラ整備 予防保全型へ転換

 【北京、マニラ時事】オランダ・ハーグの仲裁裁判所が、南シナ海での中国の領有権主張を退けた2016年7月の判決から12日で10年が経過した。申し立て国のフィリピンは判決に基づき「法の支配」の重要性を訴えているが、中国の習近平政権は判決を「紙くず」と呼び無視。南シナ海で覇権主義的な行動を強めている。
 ◇対中融和を転換
 フィリピンのマルコス大統領は10日、マニラで開かれた判決から10年を記念するイベントで「フィリピンは対立より対話、威嚇より法、そして紛争より平和を選択した」と強調。「法は弱者を守り、むき出しの権力から人間の尊厳を守るためにある」として、法の支配の重要性を説いた。
 比政府は12年、南シナ海の同国の排他的経済水域(EEZ)内にあるスカボロー礁(中国名・黄岩島)の実効支配を中国に奪われた。交渉による解決は難しいとして、13年に国連海洋法条約に基づき仲裁裁判所に提訴。南シナ海で中国が一方的に定めた境界線「九段線」を否定する判決を勝ち取った。
 判決時のドゥテルテ前政権は対中融和路線だったが、マルコス政権は方針を転換。国際法の順守を訴える「積極的透明化」政策を採用し、中国公船によるスカボロー礁周辺での比船舶への放水や体当たりの様子を公開するなどして国際社会での支持拡大を目指している。
 日米比をはじめとする14カ国政府は12日、判決から10年の節目に合わせて共同声明を発出し、判決が「中比間で最終的で法的拘束力を持つ」と指摘。「地域の平和と安定を脅かす一方的な行動に強く反対する」と中国をけん制した。
 ◇既成事実化を推進
 中国側は、判決に対し「違法かつ無法」(毛寧・外務省報道局長)と受け入れない姿勢を崩しておらず、各国の批判にも反発している。スカボロー礁周辺では実効支配の既成事実化を進めており、昨年9月に同礁を「国の自然保護区」に指定。今年5~6月には浮体構造物を設置し、中国メディアによると「科学研究設備での生態調査」を行った。
 また、中国は既存の国際法の枠組みに挑む動きも見せている。昨年10月、国家間の紛争も扱うとされる中国主導の調停機関「国際調停院」を香港に発足させた。中国は、米欧主導の国際秩序のせいで不利な判決が出たとにらんでおり、「自国の影響力が強い機関を通じて西側のルールに対抗するのが狙い」(外交関係者)とみられている。
 習政権の威圧的な行動は、南シナ海にとどまらない。日比が今年5月に合意した海洋境界画定の交渉にも強く反発している。対象海域である台湾東側には、中国のEEZや大陸棚が含まれていると主張。「第2海軍」と呼ばれる海警局などが巡視活動に乗り出しており、同海域でも現状変更を図る構えだ。 
〔写真説明〕南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)=6月15日(AFP時事)
〔写真説明〕南シナ海でフィリピン船舶(手前)に放水する中国海警局船=2025年8月、スカボロー礁周辺(比沿岸警備隊提供の動画より・AFP時事)