「台湾有事」が起きたら再び戦火に…? 中国まで最短2km「金門島」で聞いてみた 世界でも類を見ない「戦争遺産」の島【後編】

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中国が台湾に軍事侵攻した場合、その最前線となりうるのが中国本土の目と鼻の先に浮かぶ「金門」の島々です。幾度も戦争の舞台となった現地ですが、「台湾有事」がいわれるなか、地元の人々の率直な声を聴くことができました。

「古寧頭戦役」では日本人が関与し、人民解放軍を追い払った

 第二次世界大戦終了後、中国大陸では、その混乱の最中で、毛沢東率いる中国共産党と、蒋介石率いる国民党の間で国共内戦が再燃。中国共産党は1949年に、国民党を破り、「中華人民共和国」の成立を宣言します。

 この際、破れた蒋介石率いる国民党は、すでに接収していた台湾に拠点を完全に移し、孫文が1912年に建国していた中華民国を運営するようになります。

 蒋介石が中国大陸から台湾へと逃げる中、福建省沿岸の金門や馬祖といった島々は、中華民国軍が駐屯したままで、中国人民解放軍は、これら2つの島を奪取しようと攻撃。対する中華民国軍も対抗しました。

 この戦闘は「古寧頭戦役」と呼ばれます。ここで元日本陸軍人・根本 博が秘密裏に中華民国軍側に関与し、わずか数日ほどで中国人民解放軍を追い払ったことも一部で知られています。

21年にも及んだ「金門砲戦」

 中国人民解放軍もそれから約9年後の1958年には再び金門に砲撃を開始。「金門砲戦(第二次台湾海峡危機、八二三砲戦とも)」と呼ばれるもので、以降21年にわたって中国人民解放軍が金門に大小の砲撃を続けました。

 ただし、1970年代になると、中国人民解放軍による定期的な金門への砲撃は炸薬ではなく伝単(プロパガンダを訴えるチラシを撒くための砲弾)が多く、さらに毎週「月水金」と限られ、実際には戦争とは言えぬ状況でした。

 1979年に米中の国交が樹立されると、「金門砲戦」は完全に終焉を迎えました。

 金門を舞台にした、中国大陸と(台湾も統治している)中華民国との戦いは、大きくこの2つなのですが、以降も中華民国軍は戦地政務を1992年まで続けます。

 戦地政務が解除された以降も、「世界で例を見ない戦争文化遺跡」として、金門県には過去の軍事施設などが遺されているというわけです。

万一の「台湾有事」に備えて残してるの?

 しかし、2026年のいま思い浮かぶのが「ここ金門は、近年騒がれている台湾有事の拠点になるのではないか」「万一の日のために、今日も軍事施設を残したままにしているのではないか」ということ。

 この点について、金門を一緒に巡ってくれた台湾人で元中華民国軍人の孟憲徳さん、陳見安さんは「そうではないと思う」としながらも、ただし「本当に台湾有事が起きるかどうか」は全くわからないとも言いました。

 一方、我々が金門で接した人たちは皆穏やかで、緊迫した様子はうかがえません。

 金門人を前に、筆者が下手な中国語を話せば「日本人なのに中国語うまいね」と褒めてくれ、孟さんや陳さんが「台湾から来た」と言っても、誰もが明るく穏やかに接してくれました。

「金門ではもう戦争は起きない」

 福建様式(閩南様式)の家屋が残るエリアで、たまたま出会った金門で300年以上続く家系の方に話を聞くことができました。

「『台湾有事』? ……戦争が起こるとすれば『台湾(本島)』のほうでしょう。ここ金門はもう戦争は起きないと思います」

 日本人には少し理解が難しいかもしれませんが、じつに率直な話です。

「確かに昔は金門では激しい戦いがありました。しかし、実はこれらの戦争は中国政府が国民党軍を倒すため、界隈に派遣した軍隊との戦いです。海向こうの中国大陸・福建省の人々と、昔から暮らす金門の人々はこれまで激しい争いもなく、私たちは家族のように思いあってきました」

「台湾有事」が騒がれる今こそ、便宜上、金門と海向こうの福建省の行き来は厳しく制限されています。しかし、「実は今も水道や物資などの往来もあるし、お互いに憎しみ合うようなことは全くないです。それに、今、中国政府が金門を奪ったところで何もないから(苦笑)、攻撃する意味もないんです」

「台湾人」も言葉を失う「金門」の事情

 日本人の筆者はこの話を聞いて正直かなり意外でしたが、同行の台湾人で元中華民国軍人の孟憲徳さん、陳見安さんも言葉を失っていました。

 金門人の意識では、「金門と台湾は別々の島で、たまたま中華民国が双方ともに統治している」ということ。そして過去大きく2回あった金門での熾烈な戦いは、近隣の福建省の人たちとの憎しみ合いで起きたものではなく、「あくまでも中国政府と中華民国政府との争いが、当時の事情でここ金門を舞台に繰り広げられた」というわけです。

 さらに、今日いわれる「台湾有事」は、あくまでも「中国と台湾(本島)」との話であり、「台湾」とは違う金門は蚊帳の外の話だ」と思っているようです。

 また、Xさんの他にも、金門で出会った複数の地元の人に同様の話を振ってみましたが、実はおおむね同様の意見でした。

 金門、台湾、中国……その複雑な歴史、政治背景と合わせて、さらに頭の中が混乱する筆者でしたが、Xさんは全く意に介さない様子。「大丈夫。また金門に遊びにきてね」と穏やかな笑顔で結んでくれました。