欧州FCAS空中分解でドイツも急接近か!? 日英伊「GCAP」に群がる参加国と、浮き彫りになる日本の“危機”

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欧州の次期戦闘機開発「FCAS」が中止となり、ドイツが日英伊の「GCAP」へ参加する可能性が浮上。しかしGCAPも経費増大やイギリスの資金不足など課題が山積しています。日本が取るべき道を考察します。

広がるGCAPオブザーバー参画

 フランスのマクロン大統領とドイツのメルツ首相は、このたび仏独西3か国による「将来戦闘航空システム(FCAS)」の計画打ち切りで合意しました。

 FCASは、フランスの「ラファール」およびドイツとスペインの「ユーロファイター」、両機の後継となる新世代戦闘機を共同開発するためのプロジェクトで2017年に始まりましたが、フランスのダッソー・アビエーションと、防衛部門の拠点をドイツとスペインに置くエアバスの2社が戦闘機の仕様などを⁠巡って対立し、両者の主導権争いに発展していました。

 結果的に、独仏首脳はダッソーとエアバスの合意は困難と判断し、FCASにおける戦闘機の開発は中止となりました。しかし、こうした事態を予見してか、すでにドイツ政府はFCASに替わる選択肢を検討しており、そのひとつとして、日英伊3か国による「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」へのオブザーバー参加の可能性が報じられています。

 GCAPは、日本のF-2および、イギリスとイタリアの「ユーロファイター」の後継機を共同開発する事業です。すでに事業の司令塔となるGIGOと日英伊防衛大手3社の合弁会社エッジウィングが発足しているほか、それに続いて従来3か国が個別に自国企業と結んでいた契約を、2025年度以降、GIGOとエッジウィング間に一元化すべく、最初の契約が今年(2026年)4月に結ばれています。

 このように「空中分解」したFCASと比べると、GCAPは順調に進んでいるように見えます。加えて、NATO(北大西洋条約機構)との同盟関係に否定的なアメリカの第二次トランプ政権の発足によって、NATO諸国は独自の防衛力強化を進めており、その一環としてアメリカへの依存から脱却し、独自の兵器開発を目指す動きが広まっています。

GCAPの足を引っ張るイギリスの拠出金

 こうした安全保障環境の激変が追い風となって、アメリカがボーイングF-47の開発を正式発表した後も、GCAPに関心を寄せる国は増えています。これを受け、イギリスとイタリアはGCAPの第三国輸出を見据え、「オブザーバー」としての参加枠組みの創設に前向きです。

 報道によると、GCAPのオブザーバー参加とは、開発には直接加わらないものの購入に関心を寄せる国に対し、機密保持を条件としてGCAPの性能や開発状況などの情報を共有し、参加国の購入につなげるものとされています。

 そのオブザーバー参加国の候補としては、ドイツ以外にも、カナダ、スウェーデン、オーストラリア、サウジアラビア、ポーランドの名前が挙がっています。特に関税問題でトランプ政権と対立するカナダは、GCAPへのオブザーバー参加を申請したようです。そして、7月のファンボロー航空ショーに合わせて日英伊3か国の防衛大臣がイギリスで会談し、カナダのオブザーバー参加を認める方向です。

 オブザーバー参加を通じてGCAPの輸出が実現すれば、将来的には量産効果による開発コストの低減が見込めますが、GCAPにとって目下、喫緊かつ最大の問題解決には直結しません。

 実は、4月にGIGOとエッジウィングの間で結ばれた最初の契約は今年6月末までの「つなぎ契約」で、早急に複数年の本格契約へ切り替えが求められています。これは、イギリスの国防投資計画の策定が遅れたことに伴い、GCAPへの拠出金が確定できないことに起因するものです。

 このままでは、2030年代半ばにF-2の退役が始まる日本にとって死守すべき「2035年の部隊配備開始」という開発スケジュールに影響が出てしまいます。そのため、イギリスのフィナンシャル・タイムズ誌は、日本政府が圧力をかけ、イギリス政府は60億ポンド(約1兆3000億円)を拠出する方針だと報じています。

開発遅延のリスクと日本に迫られる“決断”

 またイタリアでも、60億ユーロ(約1兆500億円)と見積もられていた自国の負担額が3倍の186億ユーロ(約3兆1500億円)に増加したことが報じられるなど、GCAPの開発経費は当初の想定より増加しています。

 このため、参画国の増加によって開発遅延を望まない日本とは対照的に、「ユーロファイター」の製造が続くイギリスやイタリアは、開発スケジュールの厳守よりも、将来の輸出につながるオブザーバー参加の枠組みに熱心だと思われます。

 しかし、GACPのオブザーバー候補国のうち、オーストラリアはF-35Aをすでに運用し、カナダとポーランドおよびドイツはF-35Aを発注しています。このため、GACPの性能や開発スケジュールに満足できなかった場合や、アメリカの次の政権が国際協調路線に復帰した場合、GACPの導入を見送る可能性は十分にあるでしょう。

 こうした状況を踏まえると、まずは日英伊3か国がGCAPを計画通りに開発し、GCAPオブザーバー参加国の関心をつなぎ止めることが大前提となります。

 その最大の障壁がイギリスの開発拠出金である以上、その不足分を日本が肩代わりする代わりに、イギリス担当部位(機体ステルス技術やレーダーなどの電子機器)を日本が引き受けるといった、思い切った開発枠組みの見直しを、7月の日英伊防衛相会談の議題にする必要があるのかもしれません。