森英介衆院議長らが8日に示した皇族数確保策に関する「立法府の総意」案は、与野党の主張に配慮したものとなった。早期の合意を優先するため結論を出すのを回避し、政府に判断を丸投げした論点もある。ただ、参院野党第1党の立憲民主党は男系男子養子案になお慎重で、同党の対応次第では総意の正統性に疑義も生じかねない。
「衆参正副議長で熟議を重ね、できる限り各党の意見を踏まえた最良のものになった」。森氏は8日、12党1会派代表との全体会議に臨んだ後の記者会見でこう強調した。
総意案は「女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する」と「皇籍離脱した旧宮家の男系男子を養子に迎える」の2案について「了とし、法制化を求める」と表明した。ともに政府有識者会議の見解。どちらを優先すべきか濃淡はつけなかった。
高市早苗首相(自民党総裁)や日本維新の会は男系養子案を「第1優先」とするよう唱えたが、総意案はこの立場を取らなかった。中道改革連合が憲法14条の「門地による差別」の禁止に抵触する恐れがあるとし、「慎重な制度設計」を求めたためだ。中道幹部は「われわれの意見を入れてもらえた」と評価した。
女性皇族の配偶者と子に皇族の身分を認めることの是非も明記しなかった。立民などは付与するよう訴えるが、女系天皇誕生につながることを懸念する自民などが反対。合意形成できなかった。
旧宮家の男系男子を養子とする場合は「15歳以上」とする案が浮上したが、これも入らなかった。森氏は総意案全体について「一定の幅のある表現にとどめ、具体的な制度設計は政府の裁量に委ねた」と語った。
文言調整の最終段階では立民出身の福山哲郎参院副議長の役割がポイントとなった。同氏は「立民を含めて各党が理解できるものでなければいけない」と周囲に漏らしていた。
しかし、総意案に対する立民の受け止めは甘くない。同党を代表して8日の全体会議に出席した長浜博行氏(前参院副議長)は「女性皇族と結婚した配偶者、子どもを皇族とすることを含めて皇室典範を改正し、具体的な制度設計に進むべきだ」と従来の主張を繰り返した。
立民幹部は「われわれに歩み寄った感じはない」と明言。「福山氏からは1回説明を受けただけ。それ以降は電話もない」と不快感を示した。
森氏は10日の全体会議で「総意」を確定させたい意向。立民はそれに先立ち9日に意見集約する予定だが、結論は見通せない。
〔写真説明〕安定的な皇位継承について協議する与野党との「全体会議」後に記者会見する森英介衆院議長(中央右)。同左は、関口昌一参院議長=8日午後、東京・永田町の衆院議長公邸
〔写真説明〕記者団の取材に応じる中道改革連合「安定的な皇位継承に関する検討本部」の笠浩史本部長(右)。左は中野洋昌幹事長代行=8日、国会内