海上自衛隊で唯一、砂浜に直接乗り上げて物資を運ぶ、いわゆるビーチング能力を持っていた「輸送艇」がついに退役しました。約35年にわたって離島や被災地を支え続けた“縁の下の力持ち”の功績を振り返ります。
砂浜に直接乗り上げる!「 ビーチング」ができた稀有な船
海上自衛隊横須賀地方隊所属の「輸送艇2号」が2026年5月25日、約34年にわたる長き任務を完遂し、除籍されました。これを受け、SNSでもその引退を惜しむ声や、これまでの労をねぎらう投稿が相次いでいます。
「輸送艇2号」は、1992(平成4)年3月に就役した、輸送艇1号型の2番艇です。基準排水量420トン、全長52.0mと船体こそコンパクトですが、最大の特徴は、平底を活かして直接砂浜に乗り上げる「ビーチング」が可能な点です。艦首には観音開きのバウ・ドア(門扉)と道板(ランプ)を備え、港湾施設が整備されていない離島や僻地であっても、車両や人員、支援物資を直接揚陸できる極めて貴重な能力を有していました。
2022年に姉妹艇の「輸送艇1号」が退役して以降、本艇は海上自衛隊で唯一の輸送艇として孤軍奮闘してきました。東日本大震災をはじめとした災害派遣での物資輸送や、防災訓練への参加、陸上自衛隊の各種訓練の支援、各地の港湾での一般公開など、およそ34年もの間、縁の下の力持ち的存在として横須賀基地を拠点に活動してきました。
地味ながら自衛隊の活動を支え続けた「輸送艇2号」は、今後スクラップ(解体)される予定です。
今回の退役により、海上自衛隊からはこの種のビーチング対応型の輸送艇が姿を消すことになります。しかしその貴重な揚陸能力は、防衛大臣直轄の陸海空共同部隊として新編された「自衛隊海上輸送群」へと受け継がれ、今後は同部隊において新たな輸送艦・輸送艇が複数運用されていく計画です。