高い攻撃能力を持つ米アンソロピックの新型人工知能(AI)モデル「クロード・ミュトス」の登場は、日本のサイバー安全保障にとって新たな脅威となる可能性がある。自民党の国家サイバーセキュリティ戦略本部は、政府に対策強化を提言。平将明本部長はインタビューで、米国のIT企業を巻き込んだ取り組みの重要性を強調した。
―ミュトス登場をどう受け止めたか。
昨年、サイバー安保担当相として「今後はAI対AIの世界になる」と国会答弁したが、思ったよりも早かった。ミュトスは脆弱(ぜいじゃく)性診断に優れ、攻撃もできるところがポイントだ。
―党で緊急提言をまとめた。
(4月中旬に)米政府がアンソロピックや金融機関と対策を協議したとの報道があり、対応しなければいけないと思った。
まず狙われやすい金融業界から着手する。金融庁を国家サイバー統括室(NCO)とAIセーフティ・インスティテュート(AISI)がしっかりサポートする。もう一つは、重要インフラ全体を見る必要がある。「能動的サイバー防御」の官民協議会の枠組みを使えばいい。ヘッドはNCOで、その下にAISI、官民協議会、各省庁という組織になる。
―AI事業者の協力をどう得るか。
3年半前に自民党でAIに関するチームを作り、オープンAIやアンソロピック、グーグルなど代表的な事業者と信頼関係を醸成してきた。「世界一AIフレンドリーな国」の方針の下、包括規制に走った欧州連合(EU)とは一線を画してやってきた。
ビッグテック(巨大IT企業)を巻き込まないといけない。15日にアンソロピック幹部と会談したが、「できることは何でも協力する」ということだった。ただ、外交、安保など企業で判断できる領域を超えつつある。首相官邸と米ホワイトハウスの連携が大事だ。
―ミュトスへのアクセス権を求める声がある。
実はミュトスの一つ、二つ前のモデルでも脆弱性診断の能力はほぼ同じレベルで、(アクセス権が)なくてもやりようはある。われわれと価値観を共有しない国のAIに追い抜かれないことが重要だ。
―永続的な取り組みになる。
開発したAIが危ないからと、事業者が公開を止め、信頼できる者だけに「防御を高めてください」と渡す時代だ。その中に入れるかがポイントで、ミドルパワーの同志国と連携して交渉力を高めないといけない。
〔写真説明〕インタビューに答える自民党国家サイバーセキュリティ戦略本部の平将明本部長=18日、国会内
〔写真説明〕インタビューに答える自民党国家サイバーセキュリティ戦略本部の平将明本部長=18日、国会内