ステルス戦闘機が空中停止! 神業に見えるその操作方法とは!? 実は特殊な仕掛けがあった

成長局面を迎える日本の電子部品

戦闘機は高速で飛び続けるもの――そんな常識を覆す飛び方が存在します。ステルス戦闘機F-35「ライトニングII」のB型は、ヘリコプターのように空中で静止する「ホバリング」が可能です。

戦闘機が空中で浮いたまま停まる仕組みとは?

 戦闘機は高速で飛び続けるもの――そんな常識を覆す飛び方が存在します。ステルス戦闘機F-35「ライトニングII」のB型です。

 同機は、ヘリコプターのように空中で静止する「ホバリング」が可能です。前進して揚力を得るのが当たり前の固定翼機が、その場で浮かんでいる光景は、非常に奇妙に映ります。

 このような飛び方ができる軍用機としては、トゥルーライズに登場し、劇中でもホバリング飛行を披露したAV-8「ハリアー」(実際は改良型のハリアーII)が有名です。F-35Bは、その後継機として開発された機体です。

 飛行機は通常、翼が生み出す揚力によって空を飛びます。そのため、一定以上の速度で前進する必要があります。しかしF-35Bは、胴体内部のリフトファンと、下方に向けられる可変式エンジンノズルを組み合わせることで、推力そのもので機体重量を支え、空中に静止することができます。

 こうした特徴的な飛び方はエアショーでも披露され、多くの観客の注目を集めています。日本国内でも、岩国基地のフレンドシップデーや、新田原基地の航空祭などで実際に見ることができます。ただし、このホバリング能力は本来、観客に見せるデモンストレーション用のものではありません。F-35Bが戦闘機として任務を遂行するために備えられた能力です。

 F-35Bは、STOVL(短距離離陸・垂直着陸)能力を持ちます。短い距離で離陸し、着陸時には垂直に降下するという飛行方式です。これにより、長い滑走路がなくても運用が可能となり、小型空母や強襲揚陸艦といった艦艇から発着艦できるようになります。日本でも、海上自衛隊のいずも型護衛艦の改修が進められており、将来的には航空自衛隊のF-35Bの運用が予定されています。

 つまり、ホバリングは単体の特殊な機能ではなく、STOVL運用の中で使われる重要な要素のひとつなのです。

操縦は簡単 しかし余裕はないという仕様

 そもそも、ヘリコプターやハリアーのような機体でホバリングを行うのは簡単ではありません。機体は常に不安定で、風の影響も受けやすく、パイロットは位置を維持するために細かな操作を続ける必要があります。

 しかしF-35Bでは、こうした負担の多くがコンピューターによって肩代わりされています。STOVLモードに切り替えると、機体側が推力配分や姿勢制御を自動で行い、減速すれば安定したホバリング状態へ移行します。パイロットは機体を直接細かく操縦するのではなく、「どこへ動かすか」を指示するだけでよいとされており、その操縦感覚は、プロポで飛行を操作するドローンに近いものだといいます。

 このように操縦は大きく簡素化されていますが、F-35Bのホバリングが決して余裕のある飛行というわけではありません。

 まず大きな制約となるのが重量です。機体を推力だけで支えるためには、燃料や搭載物の量を抑え、機体を軽くする必要があります。さらに、ホバリング中はエンジンが高出力状態となるため、燃料消費も非常に大きくなります。

 その結果、ホバリングを維持できる時間は数分程度に限られ、長時間続けることはできません。着陸のやり直しにも大きな余裕はなく、常に燃料残量を意識した判断が求められます。つまり、操縦そのものは簡単になった一方で、運用としては極めてシビアな飛行であるというわけです。

 F-35BがSTOVLモードで操縦を自動化したのは、単なる操作の簡略化が目的ではありません。パイロットを操縦から解放し、燃料や位置、タイミングといった飛行全体のマネジメントに集中させることで、安全かつ確実な運用を実現する狙いがあります。

 空中で静止するという、一見すると「神業」のような飛行も、その裏では緻密な制御と余裕のない運用条件の中で成り立っています。B型の操縦は、同じF-35であっても独自のスキルが求められるのです。