本国から遠く1万km! 南太平洋の孤島で発生した医療危機に対しイギリス軍は空中給油の支援のもと長距離飛行を経て、医療従事者を空挺降下させました。
輸送機はアセンション諸島を経て、絶海の孤島へ
クルーズ船「MVホンディウス」で発生したハンタウィルスの集団感染は、世界的なニュースとして連日報道されていますが、なんとイギリス軍が感染の可能性がある男性を救助するため、2026年5月9日に南大西洋で“空挺作戦”を実行しました。
空挺作戦の舞台は、南大西洋に浮かぶ英国領トリスタン・ダ・クーニャ島です。最寄りの有人島が2500km離れたセントヘレナ島という、世界でもっとも孤立した有人島として知られています。この孤立した島で、MVホンディウスを下船した男性1名にハンタウィルス感染の疑いが生じたのです。
この島に飛行場はなく、通常は船でしかアクセスができません。しかし、イギリス軍の発表によれば島内の医療物資の状況が切迫し、患者を救うには医療物資を医療チームごとパラシュート降下させるしかなかったことから、今回の作戦が決定されました。
投入されたのは第16空中強襲旅団の6名の空挺兵と2名の医療関係者です。彼らを乗せたエアバスA400M輸送機は、本国ブライズ・ノートン空軍基地から6788kmを飛行して南大西洋のアセンション島に至り、さらに3000kmを飛んでトリスタン・ダ・クーニャ島の上空に到達しました。この長時間の飛行にあたっては、ボイジャー空中給油機(エアバスA330MRTT)による支援が行われました。
トリスタン・ダ・クーニャ島は地理だけでなく気象条件も過酷であり、平均風速が25マイル(約40km/h)を超えることも少なくありません。降下部隊にとって困難な状況が予想されたなかで、隊員たちは無事降下し、医療物資を届けることに成功しました。まさに、半世紀前のフォークランド爆撃作戦「ブラック・バック」を彷彿とさせる長距離空挺作戦であり、イギリス軍の展開能力の底力を見せつけたといえるでしょう。