政府が、南米5カ国による関税同盟「南米南部共同市場(メルコスル)」との経済連携協定(EPA)締結交渉を開始する方向で調整していることが3日分かった。牛肉など安価な農畜産物が流入することへの懸念は強いが、トランプ米政権の高関税政策や中国のレアアース(希土類)輸出規制を踏まえ、市場の拡大と重要物資の調達網多様化が必要だと判断した。
日本とメルコスルは今年、「戦略的パートナーシップ枠組み」に関する会合を2回開催。貿易・投資分野の連携強化に加え、EPA交渉に入った場合の関心分野についても協議した。
EPAは特に南米側の期待が強い。加盟国のブラジルやアルゼンチン、ウルグアイは牛肉や鶏肉、大豆の輸出大国。日本側は国内の農畜産業が深刻な打撃を受けかねないため、自民党の農林族は交渉開始に反対してきた。
だが、直近の1年間で貿易と通商に関する環境は激変した。米国の高関税政策を受けて自由貿易を維持できるかは不透明。レアアースは自動車や精密機器など幅広い製品に不可欠で、経済界も早期の交渉開始を求めていた。
こうした情勢を受けて、自民内から「交渉次第で牛肉などに影響が出ない方法もある。交渉入りは認める」(農林族重鎮)との声が出ている。政府関係者は、米イランによる戦闘の影響が長期化するとの観測も念頭に「経済安全保障の観点からも良いタイミングだ」と指摘した。
〔写真説明〕外務省庁舎=3月12日、東京都千代田区