「誰が漏らしているのか」「極めて遺憾」自賠責の引上げが毎回“事前にバレる”問題 審議会は“報道の後追い” 問われる公正性

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実質的な自賠責保険料を決める審議会で、保険料の引き上げ幅が事前に報道される情報漏洩が問題になっています。「安易なリーク」で、審議の公正性や制度への信頼が問われています。

自賠責の負担増のタイミングでいつもリークされる料率 結果的に審議会は後追い

 自賠責審議会(自動車損害賠償責任保険審議会)における情報漏洩が問題になっています。公正中立な審議を維持しようと、金融庁や関係機関が守秘義務の遵守や管理体制の徹底する姿勢を示す一方で、「自動車ユーザーの負担が増す」議論で必ず情報漏洩が起きるのはなぜでしょうか。誤解を招き、信頼を損なう恐れがあるという問題提起も内部から出ています。

 自賠責審議会(会長=藤田友敬東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、約9000万台の車両が契約する自賠責保険の保険料を、実質的に決める審議会です。強制保険であるがゆえに、保険料の基本となる保険料率や制度の根幹を議論する審議会は、徹底した情報管理がなされなければなりません。

 ところが、2026年度からの保険料率を審議する2026年4月17日の審議会で、自動車ユーザーを代表する金子晃浩委員(全日本自動車産業労働組合総連合会会長)から、こんな注文がつきました。

「4月15日、一部の新聞で保険料率6%を引き上げという報道がありました。今まさにこの審議会で審議している中で、ああいった断定的な報道が出るということは、外部に対して、あたかもこれありき、決まったかのような誤解を与えかねない。たいへん危惧しています。これについては強い抗議と再発防止のメッセージを発していただきたい」

 自賠責保険は、それ自体が保険会社の枠組みを超えた大きな1つの被害者救済保険になっています。審議会が保険料の目安となる「料率」を決定することで、損害保険各社はこれを参考に自賠責保険の保険料を定めて、自動車ユーザーに負担を求めます。任意保険のように個々の保険会社が単独で採算をとっているわけなく、審議会の議論が実質的に自賠責保険料に直結する重要な審議なのです。

 ところが、今回の審議会も結果的に新聞報道の内容を後追いする形で「6%引き上げ」の審議が進んでいて、4月30日の審議会で決定する見込みです。

金融庁「極めて遺憾」 流出の経路わからず

 自賠審の藤田会長に促され、金融庁は情報漏洩を憂慮する発言をしました。

「これまでの審議会でも、金融庁から情報管理の重要性については発信したところ。今年度も同じように事前に報道が出てしまったことは金融庁としても極めて遺憾。自賠責保険は公共性の高い強制保険ということで、透明性の高い運営を目指していく。当然、情報管理の徹底が前提だと思っている。関係省庁、損害保険協会、料率機構と情報管理の徹底を進めていきたい。同時に、委員にも守秘義務があるので情報管理の徹底をお願いしたい」

「料率機構」とは、6%引き上げを計算する損害保険料率算出機構のこと。素案が流出したことに機構の専務理事の川口伸吾特別委員も困惑します。

「料率案はこの場で初めて提示をして、委員の皆さんの意見をもらった上で、出るべきものですから、私どもとしても絶対出ないように統制していろいろ工夫をしている。ただ、当然委員も大勢いらっしゃいますし。いろんなところで流出のリスクはあると思っております。(流出の経路は)私ども全くわからないですが、そこも考えて徹底して管理してまいりたいと思います」

「賦課金」の審議でも情報漏洩で結論が先行

 漏洩は今回だけが問題になったわけではありません。結果が出る前に具体的な数字や方針が報道される事態が繰り返されており、公正中立性、ひいては制度そのものに対する自動車ユーザーの信頼が揺らいでいます。

 2023年1月13日の審議会は、保険料に新たな賦課金(=自家用車1台あたり125円/年)を上乗せすることの妥当性が審議されるはずでした。この審議会でも実質的に報道を追認する形の審議が進められました。委員である加藤憲治委員(日本自動車会議所保険特別委員長)は、こう指摘しました。

「実は、今朝のNHKの『おはよう日本』で、この賦課金の具体的な額の方向性が出ました。それを追っかけて共同通信も記事にしているようです。(略)必要不可欠な自賠責の保険制度をずっと永続的にも維持するためにも、ここは前からもお話ししているとおり、自動車ユーザーの理解が得られるように説明をしっかりやっていただくとともに、抜かれているというか、安易なリークといいますか、こういうことのないようにしていただきたいと思います」

一方的なリークで「曲解」されていく?

 この時、加藤氏は、審議会にこんな対応を求めました。

「例えば、民間企業で社長人事だとか、会社を買収というようなことが漏れたら、必ずプレスリリースで、本日のマスコミの報道については、『当社から発信したものでございません』ということを言っていると思う。改めて国土交通省(賦課金の担当省庁)側から、しっかりとこの内容について説明をすれば、国民の納得というか、ユーザーを含めた納得性はあると思うんですけども、一方的にリークされて何もしないでいくと、結局こうやって曲解されていくというところが非常に心配です」

 しかし、今回の審議会まで金融庁がこうした対外的なメッセージを今回の情報漏洩について片山さつき金融担当相は、2026年4月21日の閣議後会見で次のように話しています。

「一般論として、金融庁としては情報管理を徹底するようにいつも示達してあるわけで、それが仮にそうじゃないんだったら、さらに徹底していくということですが、我々としては現時点でどこからどのように情報が出ているのか全く把握できておりません。守秘義務の遵守の徹底を関係先にしていくとか、そういうことをしていって、それでも出てしまう場合っていうのはどうしたらいいのかなって思いますけれども、情報管理には徹底をしていきたい。公正中立な審議をきちっと損なうことがないように、引き続き情報管理はちゃんとやっていきたい」

 2026年度は、30年以上前に一般会計へ繰り入れられた自賠責保険料の運用益積立金が国交省へ“全額返済”されることが決まっています。被害者救済のための約5700億円の財源が戻ってくるタイミングでの保険料引き上げです。自動車ユーザーの負担が増すタイミングで浮上する問題。漏洩しても審議に影響がないとするならば、事前に自動車ユーザー全体に示すことが必要ではないでしょうか。