令和の「自衛艦隊ペルシャ湾派遣」は現実となるか? 米軍の掃海部隊が頼りにならない理由と海自35年の進化

運賃値上げで鉄道保守工事に注目

アメリカ・イスラエルとイランの対立により緊迫する中東情勢。アメリカの要請による日本の「軍事的貢献」の筆頭に挙げられているのがペルシャ湾の掃海です。海自の掃海部隊の陣容と、なぜ日本に要請するのかひも解きます。

ホルムズ海峡の混乱に直面する日本

 2026年2月28日に、アメリカとイスラエル合同軍によるイラン攻撃、「エピック・フューリー作戦」が開始されて以降、アメリカは関係国に対して強く支援を求めるようになっています。同盟国である日本に対し、関与が求められる可能性がもっとも高いのが海上自衛隊の掃海部隊です。

 作戦開始直後の3月中旬、訪米した高市首相とトランプ米大統領による首脳会談が行われ、トランプ大統領から、ホルムズ海峡の航行安全確保に貢献するよう直接の要請があったと報じられています。これに対して日本側は「日本の法律の範囲内で可能な対応を検討する」と述べ、世界経済の混乱の緩和に協力する姿勢は示しつつも、軍事的な関与の具体策については慎重な立場を維持しています。

 会談前は、中東へのエネルギー依存度の高さを背景に、なし崩し的な軍事的関与を懸念する声もありましたが、現時点では外交的なバランスをうまく保っていると言えるでしょう。

 しかし、イランでの軍事衝突が長期化し、混乱が続けば、「エネルギー安全保障」という死活問題を前に、より強度の高い軍事的協力を求められる可能性は否定できません。

 なぜなら過去、日本はアメリカの強い要請を受け、ペルシャ湾に海自艦艇を派遣した実績があるからです。

湾岸戦争時のペルシャ湾掃海部隊

 海自艦艇が派遣されたのは今から35年ほど前の1991年のことです。当時、イラクのクウェート侵攻に端を発した湾岸戦争が、アメリカを中心とする多国籍軍の介入によって終了したものの、イラク軍がペルシャ湾に敷設した推定1200個以上の機雷が問題となっていました。

 そこで各国は協同で除去に当たることを決定。そのために、海上自衛隊の掃海部隊が派遣されたのです。1991年5月から10月まで派遣された「ペルシャ湾掃海部隊」は、海上自衛隊発足後に初めての実任務を伴う本格的海外派遣任務でした。

 もっとも、その部隊内容は厳しいものでした。旗艦となった掃海母艦「はやせ」こそ満載排水量約3000トンと大型で、掃海ヘリコプターの運用も可能でした。ところが実際に掃海に携わるはつしま型掃海艇は、日本近海での運用を想定していたため、排水量500トン程度しかありませんでした。海自は、このような小さな船でペルシャ湾を往復するだけでなく、長期の任務をこなさねばならなかったのです。

 また、当時の掃海艇は磁気感応機雷に備えて木製船体であるのが常識でしたが、そうした事情を知らないメディアが「木造の小型艦を中東での危険に投入しようとしている」という文脈で、政府批判を含んだ報道をした例もありました。

 とはいえ、実際には前年(1990年)に就役したばかりの補給艦「ときわ」も加わるなど、任務自体は海自が万全の支援体制で臨みました。結果、ペルシャ湾掃海部隊は、500名を超える隊員から1人の犠牲も出すこともなく、34個の機雷を処分して、見事に活動を終えたのです。

 今回の「エピック・フューリー作戦」でも、何らかの形で海上自衛隊が掃海任務に投入される可能性は捨てきれません。2026年現在の海自掃海部隊の能力はどれぐらいなのでしょうか。

大きく進化した日本の掃海部隊 一方の米軍掃海部隊はまもなく消滅!

 1991年の掃海部隊派遣から約35年の間に、海自の掃海能力は、驚くほど様変わりしています。

 たとえば、1997年にネームシップが就役したうらが型掃海母艦は、「はやせ」のペルシャ湾派遣時の経験が十分にフィードバックされた実践的な艦であり、満載排水量も7000トンに迫るなど、格段に性能が向上しています。

 はつしま型掃海艇は23隻すべて退役し、後継の中型掃海艇うわじま型の9隻も、2020年までにすべて退役しています。2026年4月現在、このサイズの掃海艇はすがしま型6隻とひらしま型3隻に加えて、海自初のガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を船体に採用した、えのしま型掃海艇3隻という陣容になっています。

 また、35年前のペルシャ湾掃海部隊の時代にはなかった艦種として、海自では外洋での運用を前提とした、深深度機雷掃海用の満載1200トン級ある、やえやま型掃海艦(MSO)を導入しました。このタイプは2017年までに3隻すべてが退役し、現在はあわじ型掃海艦の就役が始まっています。

 加えて、35年前には存在しなかった無人潜水機(UUV)などの自律型水中航走体も実用化されています。これにより、人員を危険にさらすことなく、確実な機雷捜索や目標識別が可能となりました。

 加えて特筆すべきは、要請元であるアメリカ海軍の現状です。現在、同海軍の現役掃海艦はわずか4隻。それらも2027年までにすべて退役する予定であり、アメリカ軍自身が「掃海に関しては他国の協力なしには立ち行かない」という極めて脆弱な状況にあるのです。

 自衛隊派遣は起こらないのが最善ですが、もし再びペルシャ湾での任務が発生した場合、世界屈指の能力を持つ「令和の掃海部隊」にかかる期待と責任は、35年前とは比較にならないほど重いものになるでしょう。