
<富士通レディース 事前情報◇16日◇東急セブンハンドレッドクラブ(千葉県)◇6697ヤード・パー72>
注目ルーキーのひとりは、今、試行錯誤の秋を過ごしている。1年目のシーズンながら6月の「ニチレイレディス」で初優勝した入谷響だが、少し涼しくなったコースで“ルーキーの洗礼”と戦う日々だ。
「ショットの曲がり幅が一番大きいですね。飛距離も落ちてます」
入谷と言えば、19歳ながら圧倒的な飛距離で開幕から注目を集めた。現在もドライビングディスタンスは258.57ヤードの4位に位置するが、29試合を戦い、「振れてない」という“異変”も感じている。
アマチュア時代と違い、毎週、試合が行われるプロの世界で、ルーキーはまずその流れに慣れることも大事な仕事と言われる。レギュラーツアーは次から次へと日本全国を飛び回り試合をこなす。4日間大会が増えた近年は、体や精神への負担もさらに大きくなっている。
入谷も「自分では感じてはないけれど…」というものの、疲れの影響は否定しない。今季1勝でメルセデス・ランキングは21位と上位につけてはいるが、直近10試合でトップ10は1試合のみで4度の予選落ちと、少し苦しい時間を過ごしている。その大きな原因になっているのが“曲がり幅”というわけだ。
そのタイミングでは、精力的にクラブ面のテストを行う姿も見られている。先週からドライバーとフェアウェイウッドのシャフトでグラファイトデザインの『ツアーAD FI(6S)』をテストし、それを投入する考えも示した。重さは60グラム台で硬さもこれまでと同じものだが、「コース自体狭くないので、ここならしっかり振れそう」というのが、今週、実戦投入しようと考えた理由。そして何よりも「気分転換」という気持ちも強い。
「今季も残り少ないので焦りも感じています」という本音も漏らす。今季もカレンダーも残り7試合で終わる。現状を打破する気持ちに急かされてもいるが、自分にこうも言い聞かせている。「あのタイミングで勝てたのはよかった。もし勝ってなければ、シードとかのことを考えてもっと焦っていたと思う」。優勝の資格で来季の出場権はすでに確保済み。腰を据えて、調子を上げていけばいい、というのが少し心の余裕も生んでいる。
今週の会場では同期の中村心が「体重が落ちて、それで飛距離も落ちてしまって」と新たなドライバーを試していたが、ルーキーたちにとって、この終盤戦は試練の時でもある。現在、第一線で戦うプロたちも、この苦しみを乗り越え、飛躍している。(文・間宮輝憲)