「海はすごく豊かに戻ってきている…」 – 6年ぶりの釣行で見えた未来の漁業へのヒント【前編】

「海底でヒラメがミルフィーユみたいになっているに違いない(笑)」――9月30日、“原発からもっとも近い漁港”富岡漁港で開催された「復興釣り大会」で聞こえてきた言葉です。原発から10km~20kmのエリアで行われた釣り大会。20人の釣り師が参加し、70センチオーバーのヒラメを次々と釣り上げ、豊かな海が戻っていることを実感することができました。富岡漁港での1日も早い本格操業再開を願って開催されたものではありますが、と同時にさらに大きなビジョンを参加者たちに垣間見せてくれるものでもありました。ある参加者がこう話しています。「漁場も休めれば資源を回復することを実感した。日本の漁業の未来を考えるヒントがここにあるのでは」――。

この「富岡復興釣り大会」は、富岡町でまちづくりなどの活動に取り組む一般社団法人「とみおかプラス」と、日刊スポーツの共催で行われたもの。2011年の東日本大震災と原発事故以降、現地では試験操業、有志市民団体による海洋調査が認められているものの、一般人が釣りに入るのは実に6年ぶりのこと。福島県内の参加者のほか、半数は東京、神奈川などの首都圏からの参加でした。

年々福島県の水産物の放射線濃度は低下しており、昨年には松川浦(相馬市)で青のり漁の試験操業が開始されるなど、「福島県の水産業は着実に前進している」(県関係者)。今回の大会も、釣り船「長栄丸」の船長・石井宏和氏らが、「豊かな海を実感してほしい」という思いから発案し、とみおかプラス、“釣りでまちおこし”の活動を展開する日刊スポーツが主旨に賛同し開催にこぎつけました。各地で釣りをテコにした活動を展開し、“タコボウズ”の異名で知られる日刊スポーツ文化社会部記者の寺沢卓(たかし)氏は、「いま海がどうなっているか、釣ってみて感じなければ始まらない」と話しています。長栄丸は、双葉海域の調査には協力していたものの、船は他の港に係留しており、この釣り大会で6年ぶりに富岡港に“帰還”したことになります。開会式で、石井船長は「富岡の海は、すごく豊かに戻ってきている。その姿を実感してほしい」と参加者に呼びかけました。

出船は7時。事前調査で魚影が非常に濃いことが分かっており、あえてジギング(ルアー、疑似餌の一種)での釣り限定。釣ったうち、最大のものの重量で順位を競います。釣りが始まると、またたく間に良型のヒラメがヒット。引きも強力でファイトも十分に楽しめます。海底にいるヒラメですが、海底から10メートル以上離れた層でもジグに積極的に食いついてくるなど活性が極めて高いのも特徴でした。石井船長によると、震災前は「平均50センチ前後、1人で多くても4、5枚」という釣果が普通だったそうですが、この日は70センチオーバーが続出。釣っている人では10枚を越えるヒラメをヒットさせていました。かくいう筆者もこれがヒラメジギング初挑戦。“下手の横好き”でボウズ(まったく釣れないこと)のほうがはるかに多い釣り愛好家ではありますが、この日は6匹をヒットさせ、“常磐ヒラメ”の醍醐味を堪能することができました。

好調だったために、この日は10時30分で早上がりとなり、昼から「ふたばワールド2017」の会場で計量と表彰式が行われました。「ふたばワールド2017」は復興の機運醸成のため、2013年に14年ぶりに復活した双葉郡のイベントで、双葉郡 8 町村を巡回して開催しています。今年は富岡町での開催だったため、釣り大会もこの日に合わせて開催。会場で計量されるヒラメを見て地域の人々も興味津々といった様子で、釣り大会が祭りの盛り上げに一役買った格好となりました。

計量の結果、1位は90センチで6.8kgという座布団のような大物を釣り上げた神奈川県からの参加者が受賞。以下、2位82センチ5.6kg、3位77センチ5.5kg、4位81センチ5.0kg、5位79センチ4.9kgと良型が続きました。いずれも会場に設置された機器で放射線を検査し、検出下限以下(ND)という結果が得られています。

【後編へ続く】

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