第8回 薬味やだし汁で5通りもの味が楽しめる「かき揚げまぶし」


第8回 薬味やだし汁で5通りもの味が楽しめる名古屋めしが「かき揚げまぶし」  キング・オブ・名古屋めし、ひつまぶし。その醍醐味といえば、薬味やだし汁での味変に尽きる。

 たった一杯で何通りもの味が楽しめるのが、お値打ちが大好きな名古屋人のハートをガッチリと掴んだのだ。名古屋には、鰻以外にも細かく刻んだ牛肉や鶏肉をご飯にのせたひつまぶし風のメニューを出す店が多い。


 地下鉄名城線砂田橋駅近くにある『天ぷら やじま。』もその一つ。

 ここは独自ブレンドした油を使い、旬の魚介や野菜を薄衣に閉じ込めた天ぷらが楽しめる人気店。ひつまぶし風のメニューが誕生したのは、天ぷらのコースの〆に食べる天丼と天茶を選ぶのに迷っていた客の何気ないひと言がきっかけだったという。


「『天丼と天茶、両方とも食べたい!』と、おっしゃったんです。

 さすがに両方は量が多すぎるので、ひつまぶし風にすればいいのではと思ったんです」と、店主の矢島知典さん。 

 それがお櫃に入ったご飯を覆い尽くすほど大きなかき揚げをのせた「かき揚げまぶし」(昼1728円・夜2160円)。

 1杯目はブレンド塩で。2杯目は塩とワサビ、ネギをのせて。3杯目は天丼のタレで。4杯目はタレとワサビ、ネギで。5杯目はだし汁で。実に5通りもの味が楽しめるのだ。

 かき揚げはたっぷりの海老と香りのよい三つ葉入り。私のようなアラフィフになると、すぐに胃もたれしてしまうが、ここの天ぷらはノープロブレム。

 しかも、塩やワサビ、ネギなどの薬味を用いることで、サラッと食べられる。

 私が驚いたのは、天ぷらとワサビの相性の良さ。ワサビの刺激が海老の甘みが見事なまでに引き出されるのだ。これは矢島さんにとっても意外な発見だったようだ。

「修業時代も含めて、天ぷらをワサビで食べたことはありませんでした。和食の世界では、この組み合わせは邪道だとお叱りを受けるかもしれません。が、塩とワサビでいただく2杯目の食べ方が私も気に入っています」(矢島さん)


 こちらは新作のテイクアウトメニュー「天まる」(756円※ランチまたはディナーで食事した人のみ購入可)。

 丼つゆにくぐらせた海老天を大葉と梅肉とともに巻き寿司にしてある。

 海老天のみの巻き寿司はよく見かけるが、大葉の香りと梅肉の酸味がくわわり、よりさっぱりと食べられる。驚くのは、顆粒だしが付くこと。お椀に「天まる」を入れて、その上から顆粒だしをかけてお湯を注ぐと、「天まるまぶし」として楽しめるのだ。

 このように、ひつまぶしに使う薬味やだし汁は、鰻のみならず魚介や牛肉、豚肉、鶏肉など、丼ものの具材になるものであれば何にでも合う。ゆえに、「かき揚げまぶし」などのアレンジメニューが生まれたのだ。この汎用性の高さもまた名古屋めしの特徴である。


天ぷら やじま。/愛知県名古屋市東区砂田橋5-2-10/℡052-711-0182/[営]11:30〜14:00(13:30L.O.)、17:30~22:00(21:30L.O.)/[休]日/[交]地下鉄名城線砂田橋駅1番出口から徒歩5分

永谷正樹(ながや・まさき)
1969年生まれのアラフィフライター兼カメラマン。名古屋めしをこよなく愛し、『おとなの週末』をはじめとする全国誌に発信。名古屋めしの専門家としてテレビ出演や講演会もこなす。

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