日独の巨大輸送機と海自の救難飛行艇が集結! 「空飛ぶ医療空間」を使った“命のリレー”訓練の全貌

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航空自衛隊入間基地に各国の輸送機が集結しました。日米共同演習「キーンソード27」での医療搬送訓練の様子です。

戦場の患者をどう運ぶ?

 ドイツ空軍の大型輸送機A400M、海上自衛隊の救難飛行艇US-2、そして航空自衛隊の輸送機C-2。国籍も軍種も異なる機体が航空自衛隊入間基地に集まりました。これらが一堂に会するのは珍しい機会です。

 令和8年度日米共同統合演習「キーンソード27」(KS27)の一環で実施された統合後方運用訓練(衛生)の一場面です。この訓練では入間基地と入間病院を舞台に最前線から病院まで患者の命をつなぐ「命のリレー」が展開されました。

 そのリレーは小型4輪無人車(UGV)から4発ターボプロップエンジンを持つ輸送機、大型救急車まで様々な乗りものが支えます。

「負傷者の運命は、最初に包帯を巻く人々にかかっている」

 戦場で負傷者が発生した際、まず求められるのが出血を止め、呼吸や循環を安定させるなどの処置です。戦術的戦闘傷病者救護といわれます。そして敵の攻撃が届きにくい場所へ、できるだけ速やかに患者を搬送しなければなりません。

 ここで活躍するのが、装甲救急車や無人車です。ウクライナ戦線では救急車も砲撃やドローンの攻撃対象となっており、救助者のリスクを減らすため、患者後送には無人車を使うことが多くなっています。2026年6月に公表されたウクライナ軍第3軍団の実績では、負傷兵600人以上を搬送したとされています。また大型ドローンによる患者空輸も行われたことが最近ニュースになりました。今回の訓練でも無人車が使われましたが、無人車単独で搬送するのではなく、救助、護衛者が付き添って搬送補助をするという役割のようでした。

 傷病の程度によっては航空機で大規模医療施設へ運ぶ必要性が生じます。それを担ったのが冒頭に紹介したA-400M、C-2、US-2の列線です。救難飛行艇US-2は広い海域や島嶼(とうしょ)を持つ日本には有用な装備です。離島からの急患輸送で多くの命を救ってきた実績があります。今回も参加各国軍の関係者から注目を集めていました。

輸送機は「移動する医療空間」

 ドイツ空軍のA400Mは4発のターボプロップエンジンを搭載し、航空自衛隊のC-2は双発のターボファンエンジンを備えています。それぞれ最大積載量が37t、36tと装甲車も運べ、航続距離は最大積載量でそれぞれ3300km、4500kmという戦術中型輸送機です。後部にぱっくりと開いたカーゴドアや尾翼を見上げると、飛行機というより構造物という迫力があります。

 航空医療搬送、いわゆる「メディバック」では、患者を目的地まで運ぶ間も必要な医療処置や容態の監視を継続します。「移動する医療空間」として機能するのです。

 そのため航空自衛隊には航空機動衛生隊が運用する、C-2とC-130H輸送機に搭載可能な「機動衛生ユニット」があります。また、ドイツ軍にも「MedEvac(航空医療搬送)装備」があります。いわば可搬式処置室といったところでしょうか。

 また、航空自衛隊入間基地には、航空医療搬送訓練装置が設置されています。C-2やC-130H、CH-47輸送ヘリコプターで使用する患者輸送用担架の配置を再現し、搬送時の対応を訓練できるシミュレータです。実際の機体を使わずに、患者の収容や機内での活動、様々な事態への対処を確認できる点が特徴です。飛行中の騒音は聴診の支障になりますし、気圧変化も患者に影響を与えます。火災や煙の発生など緊急事態も再現でき、あらゆる環境下での対処を訓練できるのが特徴です。

 入間基地に隣接する入間病院には、輸送機で空輸されてきた患者が次々と運び込まれます。この輸送機から病院までの搬送を担ったのが、入間病院の「大型救急車」です。2025年3月に運用が開始された新装備で、マイクロバス車体に多くの担架を収容できます。あまり目立ちませんが、受け入れ後の搬送手段の確保も重要です。

 患者役には隊員や病院関係者のほか、リアルな負傷を再現した人形も使われ、医療従事者や陸海空各自衛隊の隊員、ドイツ軍やアメリカ軍をはじめとする各国軍の参加者が行き交い、日本語、英語、ドイツ語が飛び交います。見学の各国軍高官や取材メディアも加わって、現場は一時、ちょっとしたカオス状態になりました。

 さらにドイツの医療テントコンテナが遅延し、当日朝到着するという事態も発生しました。組立は訓練に間に合わず、急遽、日本のテントにドイツ軍の医療器材を配置する場面もありました。

 計画にない不測の事態の発生などカオスに見えますが、機能不全になることはなく、情報と人と物を動かす綿密な連携作業は確実に回っていました。「統制されたカオス」は戦場の医療だけでなく、大規模災害医療でも共通する課題です。

 最前線の小型UGVから、大型救急車、そしてUS-2やA400M、C-2まで。戦場で命を救うのは、最初に手当てをする人だけでも、最後に治療する医師だけでもありません。その間をつなぐ乗りものと、それを動かす人々がいて救命のリレーはつながっていくのです。