後ろが出られないほどの“激詰め駐車”がなぜ当たり前に!? SUVより「いつかはセダン」な国・韓国の特殊なカーライフ事情

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現地メーカーの取材のため韓国を訪れた筆者。そこで目にしたのは、街を走るクルマや道路などに関する「日本とは違う」一見奇妙な光景の数々でした。韓国の最新クルマ事情・道路事情をレポートしていきます。

韓国人は「やっぱりセダンに乗りたい」

 2026年の夏の初め、筆者(まるも亜希子:カーライフジャーナリスト)は現地メーカーの取材のため、お隣の国・韓国を訪問しました。取材では主にソウル周辺を回ったのですが、その際に発見した、街を走るクルマや道路などに関する「日本とは違う」光景の数々が強く印象に残りました。今回は、そんな韓国の最新クルマ事情・道路事情をレポートしていきます。

 まず紹介するのは、韓国の道路を走っているクルマの種類についてです。筆者は15年前まで、ソウルや釜山のモーターショーを頻繁に取材していたのですが、当時は日本の自動車メーカーも、韓国でシェアを伸ばす勢いを持っていました。

 しかし現在の状況を見ると、日産は2020年をもって韓国市場から撤退。またホンダも、今年いっぱいでの撤退を2月に発表したばかりで、最も健闘しているのはレクサス、次いでトヨタとなっています。

 というのも、韓国は日本と同様に国産メーカーのシェアが高い市場で、その数字は日本の約9割には及ばないものの、2025年時点で約8割のシェアを韓国現地のメーカーが握っているといわれています。今回はソウルを拠点に、取材で南へ北へとかなり走り回ったのですが、確かに街中を走っているクルマは、ヒョンデやキアの車両が圧倒的に多いと実感できました。

 そんななか、輸入ブランドのクルマで多く見かけたのはメルセデス・ベンツやBMW、アウディ、MINIといったドイツ勢です。さらにBEVは絶対数で言えばまだ多くないですが、テスラもシェアを伸ばしつつあるとのこと。

 そして日本と決定的に違うのは、依然としてセダンタイプのモデルが根強い人気を誇っているということです。

 確かにSUVも増えてきていますが、韓国のエグゼクティブ層の間では、今もセダンに乗ることこそがステイタスなのだそう。一方、女性には“韓国の軽自動車”とも呼ばれるスモールカーが人気です。特にトールワゴンタイプのキア「レイ」は、筆者も市街地でよく見かけました。

後ろの車が出られない「二重駐車」が当たり前!?

 また、ソウルで訪れた場所はどこも駐車場が狭いところばかりだったのですが、筆者はここでも、日本ではまず見かけない奇妙な光景を目にしました。

 なんと駐車しているクルマのすぐ前に、別のクルマが平気で駐車しているのです。しかも滞在中は何度も同じ光景を見かけたうえに、二重駐車どころか三重駐車もザラにありました。

 これはどういうことなのか、クルマを出せないとトラブルになったりしないのか、現地の人に聞いたところ、韓国でも特にソウルは駐車場不足が深刻とのこと。そのため昔はサイドブレーキをかけずに路上へ駐車しておいて、奥に停めた人はグイグイとバンパーで前のクルマを押して道に出ていくこともあったのだとか。それこそ、イタリアやフランスで見られた路上駐車のようなイメージです。

 しかし近年は、ダッシュボードに携帯電話の番号を書いておくことで、クルマをどかしてほしい時には電話がかかってくるようになったといいます。その代わり、最近では路上駐車の取り締まりが厳しくなったため、二重三重になってもいいから駐車場の敷地内に収めるようにしているようです。

 路上駐車の取り締まり強化の理由はいくつかありますが、ひとつは歩行者の安全を守るため。歩道に乗り上げての路上駐車や、横断歩道を塞ぐような形での路上駐車をするようなマナーの悪いドライバーがいると、歩行者が車道側に出て歩かなければなりません。当然、それが交通事故の原因になっていたことから、昨今は「歩行者の権利」を守ることを重視しはじめたといいます。

 またこのほか、緊急車両が通れない事態を解消するため、CCTVやAIの活用で取り締まりがしやすくなった、という理由もあるとのこと。近年は住民からの通報も増えており、社会的に「路上駐車をなくそう」という動きが活発化しているようです。

 少し前の韓国ドラマを見ていると、韓国は路上駐車が当たり前の国というイメージでしたが、そんな当たり前だった光景も変わりつつあるのが実感できました。

交差点には「巨大なパラソル」

 もうひとつ、街の光景として大きく変わったと感じたのが、横断歩道の信号待ちをする歩行者たちを強い日差しから守るため、交差点の多くに大きなグリーンのパラソルが立てられていたことです。

 これは韓国で「クヌルマッ(日よけ幕)」と呼ばれている設備で、現地の自治体が政策のひとつとして設置を推進しているそうです。というのも、韓国では片側4〜5車線あるような幅の広い道路が珍しくなく、信号待ちの時間が長いことから、歩行者の熱中症が社会問題に。そこで、一度に10人程度は入れそうな大きなパラソルを立てることで、少しでも熱中症を減らそうとしているわけです。

 特に日傘をさせない高齢者や、ベビーカーを押しているママ、より温度の高い地面の近くを歩くことになる幼児、荷物を減らしたい観光客などにとっては、かなりありがたい存在だと感じました。しかも一部の「クヌルマッ」には、外気温や風速を感知して自動開閉する「IOTスマートパラソル」が採用されているとのこと。これはぜひ、日本も真似してほしいアイテムだと思いました。

 このように、隣国なのにクルマや道路にまつわる事情ひとつとっても、日本にはない慣習や政策がたくさんある韓国。今回の韓国訪問はメーカーの取材だけでなく、こうした現地に住む人々のカルチャー的な側面にも、大いに興味を惹かれた体験となりました。