エンジンを選べます! 世界的傑作戦闘機F-15とF-16のエンジンが“2系統”ある理由とは

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F-15とF-16、アメリカを代表する傑作戦闘機には、性能がほぼ同じでありながらメーカーの異なる2種類のエンジンが用意されてきました。その意外な理由を読み解いていきます。

F100とF110、メーカーの異なる2つのエンジン

 アメリカを代表する戦闘機に、F-15「イーグル」とF-16「ファイティングファルコン」があります。どちらも1970年代に開発され、初飛行から半世紀が経過した2026年現在も、世界各国で運用され、改良型の生産も続いています。これほど長期間にわたって第一線にとどまる機体は、戦闘機の歴史においても特筆すべき存在だと言えるでしょう。

 両機には数多くの相違点がありますが、興味深い共通点のひとつがエンジンです。F-15は双発、F-16は単発という違いこそあるものの、両機は同じ系列のエンジンを採用してきました。ただし、そこには2つの選択肢がありました。プラット・アンド・ホイットニー社製「F100」と、ジェネラル・エレクトリック社製「F110」という、異なるメーカーが開発した2つのエンジンです。

 F100は、もともとF-15向けに開発され、もう一方のF110は、F100に対抗するエンジンとしてF-16での搭載を前提に開発されました。しかし、結果として両機はどちらのエンジンも搭載できるようになりました。

 現在の代表的なモデルである、プラット・アンド・ホイットニー社製F100-PW-229と、ジェネラル・エレクトリック社製F110-GE-129は、両者ともアフターバーナー使用時の最大推力が約13トンに達します。推力の数値だけを比較すれば、両者はほぼ同等です。F-15なら2基、F-16なら1基を搭載するため、単純計算では機体ごとのエンジン推力の合計は、それぞれ約26トン、約13トンとなります。

推力は同じでも、異なる点も多い

 ただし、同じ推力を発生できるからといって、両者が完全に同じエンジンというわけではありません。圧縮機や燃焼器、タービンなどの設計思想、空気流量、燃料消費特性、整備方式には違いがあります。

 両者の違いを考えるうえで参考になる指標が「バイパス比」です。これは、エンジン内部を流れる空気のうち、「燃焼器を含むコア(中心部)の外側を流れる空気」と「燃焼器を通過する空気」の比を示します。F100-PW-229のバイパス比は0.36、F110-GE-129は0.76であり、F110のほうがバイパス比が高い(コアを迂回する空気の割合が大きい)のです。一般論としてバイパス比の高いターボファンは、亜音速での燃費に優れ、バイパス比の低いターボファンは音速以上での推力に優れます。

 なぜ、2つの選択肢が必要だったのでしょうか。同程度の最大推力を持つエンジンを2種類も用意する意味はどこにあるのでしょう。その理由は、競争による性能向上と、運用上の選択肢を確保できる点にあります。

なぜ、2系統のエンジンが必要だったのか?

 F100とF110の競争は、エンジンメーカーに性能、信頼性、整備性、調達価格の改善を促します。航空機メーカーや運用国にとっても、単一の供給元に全面的に依存せず、調達条件や運用上の要求に応じて選択できることは大きな利点となります。

 また、F-15とF-16の両方を配備する国にとって、異なるエンジンを採用しておけば、いずれかのエンジンに重大な不具合が発生し飛行停止に陥った場合でも、もう一方のエンジンを搭載した機体は飛行を続けることができます。例えば航空自衛隊はF100系列をF-15Jで使用し、F110系列をF-16の派生型であるF-2で使用しています。

 同じ機種でエンジンを変える場合もあります。韓国空軍のF-15Kは導入時期によって搭載エンジンが異なり、初期調達分にはF110が採用された一方、後続調達分ではF100エンジンが選択されました。アメリカ空軍は逆にF-15EはF100を搭載し、後のF-15EXはF110を搭載しています。

 もっとも、異なるエンジンを併用すれば、部品在庫、整備要員の教育、専用器材の調達などが複雑になり、維持費が増加する可能性があります。したがって、エンジンの分散調達は、それ自体が常に最適解というわけではありません。供給途絶への備えと、整備体系を統一することによる効率性。その両者を比較したうえで判断されていると考えられます。

 半世紀にわたってF-15とF-16が進化を続けてきた背景には、機体そのものの優秀さに加え、こうしたエンジン技術の競争と選択の仕組みも存在していたと言えるでしょう。