急進左派、民主結束の試金石=イスラム教徒候補に不信感、ユダヤ・黒人に共和接近―中西部ミシガン州・米中間選挙

頻発する内水氾濫を防ぐには?

 11月3日に迫った米中間選挙で、上院の多数派奪還を狙う野党民主党にとって、中西部ミシガン州の議席死守は最重要課題となる。ただ、中道派と急進左派との亀裂が尾を引き、伝統的支持基盤であるユダヤ系や黒人有権者の一部には、イスラム教徒でもある候補者への不信感が漂う。与党共和党が切り崩しを図る中、選挙は急進左派が党内を結束させられるかの試金石となる。
 ◇オバマ氏で党内融和
 「彼はワシントンの腐敗した政治に立ち向かっている。どこが過激なのか」。民主党のオバマ元大統領は24日、ミシガン州デトロイトでこう強調し、急進左派の同党上院候補アブドゥル・エルサイード氏への支持を呼び掛けた。「全ての意見が一致する必要はない」と訴えると、会場を埋めた支持者は大きな歓声で応じた。
 史上初となるイスラム教徒の上院議員を目指すエルサイード氏は、8月の予備選で民主党指導部やイスラエル支持のロビー団体が支援した中道派候補に勝利。急進左派の台頭を印象付け、トランプ大統領も名指しで批判する全米注目の候補となった。
 しかし、本選では党内のしこり解消が課題となる。2024年大統領選を巡り、エルサイード氏は対イスラエル政策への抗議から「支持候補なし」運動を支持。過去にはオバマ政権を批判した経緯もあり、オバマ氏に信頼を寄せる黒人有権者にはわだかまりが残る。
 ワシントン・ポスト紙の9月の世論調査では、黒人有権者の83%が民主党の上院多数派を望むと回答する一方、エルサイード氏への支持は67%にとどまった。党内基盤固めを急ぐ陣営は、9月にハリス前副大統領を迎え黒人女性の医療向上策をアピール。オバマ氏の応援も党内融和が狙いで、エルサイード氏は取材に「米国で最も人気のある政治家だ」と影響力への期待をにじませた。
 ◇拭えぬ警戒
 懸念がより強いのはユダヤ系有権者の動向だ。エルサイード氏はイスラエルのパレスチナ自治区ガザ攻撃を「ジェノサイド(集団殺害)」と呼び、米国による軍事支援の停止を要求。3月にデトロイト郊外のシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)が襲撃された事件では、実行犯がイスラエル軍の攻撃で親族を亡くしていたことに触れ「傷ついた人は人を傷つける」と発言。実行犯を擁護したと受け取られ、ユダヤ系住民の怒りを買った。
 そのシナゴーグ周辺には共和党候補ロジャース元下院議員の支持を表明する看板が目立つ。ユダヤ教の宗教指導者アッシャー・ロパティンさんは「深いトラウマと恐怖を残した」とエルサイード氏への警戒感を示し、ユダヤ系のラリー・ワイナーさんは「気持ちが離れた」と語った。
 ◇距離感が難題
 ロジャース氏は、民主党支持層への働き掛けを強める。選挙戦終盤に黒人住民の多い地区に新たな事務所を設置。エルサイード氏の主張は過激だと忌避する民主党員が、ロジャース氏を支援する組織を立ち上げる動きも出ている。
 最大の悩みは、支持率が低迷するトランプ氏との関係だ。ロジャース氏はデトロイトと接するカナダのビールを手に「カナダは敵ではない」と訴える広告を打ち出し、政権の関税政策と一線を引く。共和党系ストラテジストのデニス・ダルノイさんは、「MAGA(マガ)派を怒らせず、トランプ氏といかに距離を取るかが難題だ」と語る。
 ミシガン州は共和、民主両党が競る激戦州の一つ。ミシガン大のフリオ・ボルケス准教授(政治学)は、エルサイード氏が勝利すれば「急進左派は激戦州で勝てないという従来の見方に疑問を投げ掛ける」と指摘し、民主党の選挙戦略に変化を促す可能性があるとの認識を示した。 
〔写真説明〕民主党上院候補のアブドゥル・エルサイード氏(左)と共和党上院候補のロジャース元下院議員
〔写真説明〕黒人住民の多い地区に設置した米共和党上院候補ロジャース氏の事務所=22日、中西部ミシガン州デトロイト
〔写真説明〕支持者の前でオバマ元米大統領(右)と握手を交わす民主党候補のエルサイード氏=24日、中西部ミシガン州デトロイト