大阪の木津川に架かる「千本松大橋」と「新木津川大橋」は、それぞれ両岸ループ構造と、3層ループ構造というユニークな構造を持つ巨大な橋です。今回、この2つの橋を実際に走ってみました。
「メガネ橋」と「超ぐるぐる橋」
大阪府の大正区、西成区、住之江区にかけて流れる木津川には、2つの巨大ループ橋があります。ひとつが、両岸に2回転のループがあり、通称“メガネ橋”と呼ばれる「千本松大橋」。そしてもうひとつが、日本最大級の3層構造ループを持つ「新木津川大橋」です。
この2つの巨大ループ橋がある大阪の臨海エリアは、高度成長期とともに工業地帯として急速に発展しました。一方、木津川を境に陸路が分断されていて、周辺は資材を行き来させるクルマの移動で慢性的な渋滞に悩まされてもいました。
そこで1973(昭和48)年にまず架けられたのが千本松大橋です。この橋は両岸にループ構造を持ち、上空から見るとメガネのような形に見えることから、通称「メガネ橋」と呼ばれ親しまれるようになりました。
どうして両岸にループ構造を設けなければいけなかったか、理由は大きくふたつあります。ひとつは、木津川を行き来する大型船の航行を確保するため橋を高くする必要があったから、もうひとつは、両岸双方に直線の坂を作れるだけの十分な長さをもつスペースがなかったためです。
ループ構造は、一方の岸でスペースが確保できない場合などに採用されるケースが多いですが、橋を高くすればそのぶん、取付部も長くする必要があります。そんなスペースもないので、「その場でらせん階段のようにグルグルさせるしかないやん!」と、この両岸ループ構造が考案されたわけです。
実際に走ってみると、まるでミニカー「トミカ」シリーズ用の立体駐車場である「トミカシティーパーキング」の実写版と言いたくなるような体験です。橋の上部は平らではなく、頂点まで上り、そこから一気にぐるぐるとループを下がっていきます。
「両岸にループがある橋」としては日本初の試みとなった千本松大橋ですが、どちらもクルマやバイクだけでなく、歩行者や自転車でも渡ることができます。ただし、その高さは地上11〜12階建てのビルと同等という超過酷な激坂ループであり、地元では「地獄の坂道」としてもよく知られています。
最高地点は地上約50m!「新木津川大橋」
一方、千本松大橋の完成から21年後の1994(平成6)年には、その数百メートルほど下流に、片側ループ構造を持つ新木津川大橋が完成しました。
新木津川大橋は、大阪の臨海エリアのさらなる開発や、環状道路網の整備計画に合わせて造られたものでしたが、片側のループ構造はなんと3層で、1080度も回転します。
また、新木津川大橋もクルマやバイクだけでなく、歩行者や自転車も渡ることができますが、その最高地点の高さは地上50mにも達します。こちらも「天保山(標高4.53m)の10倍以上の高さまで、自力で登ると同じやで」と、地元ではよく冗談混じりに語られることがあるそうです。
この3層ループを登り切った頂点から見る大阪の景色は、息をのむ絶景です。そこから対岸へは、長い長いスロープを下り、最後に180度カーブを描きながら地上に取りつきます。千本松大橋は両岸ループですが、新木津川大橋はまるで片方のループをできる限り直線に引き延ばしたような構造なのも面白いところです。やはり歩行者や自転車にとっては超過酷な橋ではありますが、とてもドラマチックな魅力を持っていると感じました。
新木津川大橋の斬新かつ合理的な構造は、完成年に「土木学会田中賞」を受賞するなど、土木・建築の業界でも高い評価を受けています。
渡し舟とのコントラストも見事!
ちなみに、千本松大橋と新木津川大橋の付近では無料の渡し船も長年運航されています。こちらは地元住民の強い要望もあり、今日まで現役で残されています。
渡し船のノスタルジックで穏やかな雰囲気と、ダイナミックで近代的な2つの巨大ループ橋とのコントラストも、この界隈のユニークな情景には欠かせない存在でしょう。
なお、どちらも地上より風の影響を受けやすいため、台風接近時などには通行止めになることもしばしばあるとのことですが、独特で貴重なこれら2つの巨大ループ橋は、ドライブ好きの方に是非とも訪れてほしい“珍”な道路構造物です。